ヒルトン小田原リゾート&スパ 神奈川県小田原市根府川583-1 2004 年2 月開業/客室数163 室
ホテルの客室の居心地のよさの基本となる快適な室温をつくり出す空調システム。しかし、多くのホテルで採用されている全館単位で冷暖房を切り替える二管式冷暖房システムでは、春、秋の端境期に空調に関するクレームが出ることも多い。さらに近年ではインバウンド需要の拡大と共に室温に対する要望の差も大きくなっているという。こうした課題に対するソリューションとして注目を集めているのが、日本ピーマック㈱が提供するホテル客室向け空調機「PAFMAC」だ。同企画では実際に導入したホテルを取材し、その使い勝手や実力のほどを探る。第3 回は神奈川県小田原市のヒルトン小田原リゾート&スパの事例をフォーカスする。
客室のリノベーションと
連動して空調工事も実施
JR 東海道線「根府川」駅から車で約5 分。相模湾を見下ろす高台に立つヒルトン小田原リゾート&スパ。敷地面積18 万㎡超の広大な敷地を有し、すべてがオーシャンビューの客室はツインタイプを主体に163 室を備える。レストラン、宴会場、温泉大浴場などを付帯するほか、フィットネス、プール、ゴルフ練習場などスポーツアクティビティーも充実したリゾートホテルだ。オープンは2004 年2 月で2019 年には開業15 周年を迎える。同ホテルでは、4 年前から館内のリノベーションを実施している。客室のインテリアは松の葉をデザインに取り入れ、地元の名物である小田原提灯をモチーフにしたブラケット( 壁照明)を設置するなど外国人がイメージする和のテイストに仕上げたという。7 月には大浴場の男性用女性用の両スペースにパウダーコーナーの拡張およびデザインを一新するなど施設のバリューアップも図っている。
この大規模リノベーションでは、客室改装工事にあわせて空調の見直しも行なったという。その理由についてヒルトン小田原リゾート&スパ 施設管理部次長の高橋 祐介氏は次のように話す。
「建物が新築から約20 年経過しており、建設当初設置した冷温水の二管式冷暖房システムでは、真夏の冷房期間と真冬の暖房期間には問題ありませんが、春秋の中間期には空調に対する課題がありました。この時期は、日中の寒暖差が大きく冷暖房が切り替えられないので送風で対応してきましたが、そういった期間は天気に大きく左右され、晴天の日には客室内が暑くなり、曇りや雨の日は逆に寒いとクレームが発生していたのです。
また、もともと公共施設ということもあり、海外のお客さまはほとんどいませんでしたが、当ホテルへのリブランド後は外国人比率も増えています。外国人のお客さまの中には真冬でもタンクトップを着てロビーを歩くお客さまもいらして体感温度の違いを感じます。そういうお客さまから、冬でも客室内が暑いから冷房がほしいと望まれることも多くなってきました。こうした空調に関するクレームが年間40 〜50 件はあったように記憶しています。
特に最近は日本の気候が変わってきたのか、空調に対する希望も増加傾向にあるように感じますね」。
こうした室温調整に対するニーズに応じるべく白羽の矢を立てたのが、日本ピーマック㈱が製造販売するPAFMAC だった。重視したのは大規模な工事を伴わずに通年で冷暖房対応を可能にすること。
PAFMAC は既存の二管式冷暖房システムを生かしながら冷暖フリーにすることができるシステム。二管式とは、ボイラー室などの熱源室でつくった温水や冷水を館内に張り巡らせた配管を通して客室に運び、室内に設置したファンコイルを介して室内に冷気や暖気を送るシステムだ。配管に冷水が流れているときは冷房、温水が流れているときは暖房が可能となる。このファンコイルという空調ユニットに、冷水でも暖房を、温水でも冷房を可能にするヒートポンプを内蔵したのがPAFMAC なのだ。実際の取り付け工事は、既存のファンコイルユニットを取り外しPAFMAC と交換するだけなので大がかりな作業は必要なく、騒音もほとんど出ないという。
「当ホテルでは営業を休止することなくすべてのリニューアル工事を進めており、客室に関しては、3 〜12 階を2 フロアずつに分けて各2 カ月、トータル1 年かけて工事しました。空調のリニューアルはファンコイルユニットからPAFMAC に機器を入れ替えるだけの簡単な施工なので、ホテルが稼働中でも工事が進められることもメリットだと思います。挙式がある日でも工事している客室の窓さえ閉めておけば問題ありませんでした。PAFMAC を導入したフロアでは、暑さ寒さに関するクレームは激減し、毛布のお届けなど宿泊部門のスタッフの業務も軽減されました」。
PAFMAC が収められた通気口
Japanese Western Deluxe Room (和洋室デラックス)