さまざまな料理人がいる中で、一人一人が持つ苦悩と挑戦の数々の物語がある。ホテル・レストランの総料理長が食の業界や若手の料理人に向けて伝えたいことは何か。これまでの長い経験の中で、どのようなことに悩み、どのようなことを考え、どのようにチームを創り上げてきたのか。インタビューを通じて後継者育成に向けた取り組み、マネジメント手法などを探るシリーズ「料理人の教育論」を月一連載(第4 週号掲載)でお届けする。
清水 誠(しみず・まこと)
1975 年福岡生。90 年地元、福岡の学校を卒業後、調理の世界へ。96 年南海サウスタワーホテル大阪(現 スイスホテル南海大阪)での勤務をきっかけに関西へ。11年クサツエストピアホテル入社。日本料理料理長を経て、17 年同社調理部長へ就任し、現在に至る。大阪、日本調理師連合会 師範も務めている
若き調理部長
互いに感じる変化を楽しむ
―まずは清水部長のキャリアを簡単にお聞かせいただけますか。
地元、福岡の学校を卒業後、腕に職を付けようとこの道を志しました。福岡の小さなお店の修行から始まり、大阪、京都でのホテル勤務を通じ、当ホテルでの勤務が10 年ほど。和食の料理長として、また昨年からは洋食・宴会調理を含めた調理部全体を管理する部長として、日々若手の育成・採用につながる活動に取り組んでいます。
―現在43 歳、業界の中では比較的若くして責任者として務めていらっしゃいますね。
スタッフも20 代、30 代の若いスタッフが多く在籍しています。私自身もまだまだ勉強や経験を重ねていかなければならない年齢ですので、若手を成長させることが自分自身の成長につながる部分も多くあり、互いの変化を感じられることはよい部分であると考えています。
ただしそれぞれの年代で価値観の違いを感じることもあり、その辺りは指導を行なううえで意識はしています。
―日ごろ指導される中では、どのようなことに重きを置かれているのでしょうか。
私が師匠から教えられてきたことでもありますが、まず「人」として、仕事に対する姿勢を大切にしてもらいたいと思い伝えてます。たとえばスポーツでは、自分の身なりに無関心だったり、道具を雑にあつかう人間には、得てして成果が伴いません。私たちの業界にも同じことが言えます。お客さまの前に出るか否かに関わらず、調理服や包丁、まな板、もっと言えば自分の周りからきちんとしようという意識のない人では、周囲からの評価を得られません。そして何年修行をしようが、その意識を変えないことには、よい仕事はできないと考えています。