品川プリンスホテルがデリバリーロボットを導入した背景は労働力不足解消のためではなく、エンターテイメントタウンとして進化するホテルを目指す中で、顧客満足度を高める1 つの手段にあった。客室は4 棟で3560 室におよび平均稼働率は90.1%、年間32 万室を販売している。そのほか、水族館174 万人などアミューズメント施設には年間500 万人を超える来館者がある。近い将来、羽田空港は眠らない24 時間空港と変わるとともに、品川エリアの再開発が進む中で、アミューズメント施設やホテル内の飲食店など、ナイトタイムでいかに収入を上げていくかを課題に改革を続けている。
「エンターテインメントは伸びしろがあると考え、宿泊者により一層楽しんでいただけることを試行錯誤する中で、今回のデリバリーロボットの導入にいたりました」(品川プリンスホテル 橋本哲充総支配人)。
誕生日のプレゼントやアメニティを運んだりなど、宿泊者へのサプライズを促すというもの。ロボットが人と共存して館内を走行したりエレベーターに乗ったりなど、話題作りにもつなげることができる。現在、1 日平均30 件、クリスマスのときにはサプライズ演出として50 件の注文があった。
「人から人へモノを運ぶ、革新的な自律走行型デリバリーロボットです。生産性を高めるだけではなく、人々に驚きや笑顔、新しい体験をもたらすことができます」(NEC ネッツエスアイ㈱ テクニカルサービス事業本部長代理 石川靖志執行役員)。
自律走行型デリバリーロボットはホテルを中心に80 台以上の導入実績があり、2018 年4 月時点で25 万回の配達実績がある。搬送成功率は99.3%(0.7%は呼び鈴を鳴らしたが客室から出てこなかったなど)を上げている。シンガポールのホテルでは政府から補助金で8 台導入、深夜のデリバリーに活用している。
今後の取り組みとして人とロボットが協働する自律走行型清掃ロボットに着手し、安全かつ効率的な清掃業務を実現し、さらに清掃品質の向上を目指す。富士キメラ「2017 サービスロボット/ RPA 関連市場の将来展望によると、2030 年業界別のサービスロボット市場予測において製造業、医療・介護業に次いで宿泊・飲食業がランキングされており、今後ますますロボットと人との共存シーンが増えていくことが分かる。
もはやロボットの存在は欠かせないものであり、効率化、生産性にとどまらないエンターテインメント性によるマーケティング開拓など、多様な目的で有効的に活用することを考えるときがきたのかもしれない。
品川プリンスホテル 総支配人 橋本哲充氏
NEC ネッツエスアイ㈱ 執行役員 テクニカルサービス 事業本部長代理 石川靖志氏