ザ・ペニンシュラ東京は、フォーブス・トラベルガイドで2016 年から3 年連続5 つ星評価を獲得するなど、国内ラグジュアリー市場をけん引する存在。その舵を取るのが2015 年末に総支配人に着任したソーニャ ボドゥセック氏だ。本誌では、ルームアテンダントから始まり総支配人として今日に至るまでのユニークな経験談を交えながら業界を超えた読者へのメッセージを綴る。
Profile
ザ・ペニンシュラ東京 総支配人
ソーニャ ボドゥセック 氏
Sonja Vodusek オーストラリア出身。ブルーマウンテンインターナショナル ホテルマネジメント スクールでホテルマネジメントの学位を取得後、ロイヤルメルボルン工科大学で企業経営学を修了。大学時代には、約半年間、東京のシェラトン・グランデ・トーキョー・ベイ・ホテルのルームアテンダントとしてトレーニングを経験する。大学卒業後、約16 年間にわたり、プラハ、ワシントンDC、ヒューストン、東京、アイルランドのダブリン、シドニーに位置するフォーシーズンズの宿泊部門をはじめとしたラグジュアリーホテルにおいて経験を積む。2010 年9 月、ホテルマネージャーとしてザ・ペニンシュラニューヨークに入社。11 年4 月、ザ・ペニンシュラマニラの総支配人に就任。15 年12 月15 日より現職。
Data
ザ・ペニンシュラ東京
東京都千代田区有楽町1-8-1
☎03・6270・2888
長くホスピタリティ業界に携わっていますが、一度だけこの業界から離れることを考えたことがありました。それは2003 年、日本のホテルで働いていたころのことです。当時の私は、日本の文化や習慣の違いに驚きと戸惑いを覚えることが多く、新しい環境にうまく溶け込めていないように感じ、自分の進むべき道を自問自答する日々が続いていました。東京を舞台にした映画『ロスト・イン・トランスレーション』を観て、理由は違えど、言い知れぬ孤独と不安にさいなまれて毎晩涙を流していた女性主人公に、自分の現状を重ね合わせることもあったほどです。そんな日々に、ふと周りを見渡してみると素晴らしいメンターや、共に切磋琢磨できる同僚がすぐそこにいることに気付きました。そうすると徐々に新しい環境を自然に受け入れることができ、結果的には同ホテルで働いたことは楽しく大切な思い出となりました。信頼できる人々との出会いが自分の気持ちに大きな変化をもたらし、モチベーションも自然と向上したのです。私の人生を変えてくれたといっても過言ではない出会いです。今では、その頃の状況を「信頼関係と絆を築くことができる良き出会い」、そして「自身の知識や経験、創造力を活かし、取り巻く問題に立ち向かうこと」の大切さを学ぶことができた大事な時間だったと心から思えています。もしもあの時、音を上げていたら今の私もなかったのだと、私に大きな変化をもたらしたあの時期に改めて感謝しています。