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酒のSP Bacabri Legacy Cocktail Competition 2018 世界大会

カクテルとともに進化した。バーテンダーの創造性はホテルのレガシーになる

2018年04月20日(金)
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ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町
Sky Gallery Lounge Levita バーテンダー 阿部 央(あべ・あきら)

 

 カクテルコンペティション世界大会「Bacardi Legacy Cocktail Competition 2018」(以下、BLCC)が4月26日からメキシコシティで行なわれる。2008年にスタートし、2016年からスタートした日本大会は今年は2月に行なわれ、ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町(東京都千代田区、大森伸翁総支配人)のバーテンダー、阿部央氏が優勝した。
 3度目となった今大会まですべてにチャレンジし、一昨年はセミファイナル進出、昨年は5人のファイナリストとして決勝のステージに立ち、今年見事に世界への挑戦権をつかんだ阿部氏。カクテル創造のプロセスやすでに阿部氏の代名詞になっている「オチョ」(*1)の物語を尋ねた。

*1 “8”を意味するスペイン語

3年間の集大成 「Cloud 8」から生まれたオチョ物語

 初年度に発表したカクテル「キューバン ブレックファースト」は柑橘が効いたさわやかなものでしたが、そのときに印象に残っている“カクテルとしてのインパクトに乏しい”という趣旨の審査総評をもとに方向性を変えました。2年目のカクテル「Cloud 8」では、個人的には満足のいく内容でした。優勝という結果には届かなかったのですが、翌年に向けてすぐに頭を切り替えたのを覚えています。しかし、普通の大会なら次に向けて新しく創作をするのですが、このときは違いました。100年、200年残っていくのがレガシーカクテルならば、結果が出なかったから作った作品を捨てるという考えが生まれませんでした。
 
BLCCのファイナルの審査項目にはカクテルのプロモーション活動も含まれる。「Cloud 8」で行なった3カ月間のプロモーションで強まったカクテルへの思いが、次の創作へのアプローチを変えたという。
 
 結果として優勝できませんでしたが、自分では気に入っていたこのカクテルを進化させたいと考えました。昨年の大会後に、自分のプロモーションも兼ねて「TALES OF 8」になるカクテルの原型を創りました。その後の4月に行なわれた八戸市長杯(*2)で優勝できたおかげでSpeak Low(*3)でのゲストシフトをさせていただき、このときにも原型を披露しました。3回か4回は創り直してたどり着いたのが現在の「TALES OF 8」です。
「Cloud 8」はアフターディナーに寄ったアクセントの強いカクテルでしたが、BLCCで求められるのは“もう一杯飲みたい”という魅力。初めのうちはスパークリングワインを使うつもりはなかったのですが、カクテルにキレの良さや酸味をもたらし、さらに果実由来の甘さで補正してくれます。ストーリーとの整合性も良く、なによりきめが細かく、持続性の高い泡の表現ができました。
 ミントは、グラスホッパーなどのカクテルを想像すれば、合うことは見えていましたし、モヒートの存在や歴史も踏まえて使いたいと思っていました。スタンダードカクテル「Old Cuban」のレシピやストーリー性に共感し、大事にしたのが今作であり、自分のカクテルを自分で磨いてきた、3年間の集大成だと思っています。


*2 青森県八戸市のバーテンダー、久保俊之氏を発起人としてスタートしたバーテンダーコンペティションで、毎年春になると業界内外で話題になる存在。阿部氏が優勝した大会は八戸市制施行88周年記念大会として行なわれた
*3 BLCC2012年世界大会で優勝した後閑信吾氏が中国・上海で経営するバーで、2017年のThe World’s 50 Best Bar10位、Asia’s 50 Best Barで2位の評価を受けている

エスプレッソとスパークリングワイン。カクテルの拡張性を予感するテイストとレシピのデザインワーク

場所がホテルであるかによらず、カクテルもサービス財の一つ。変動性や異質性と呼ばれるこの特質や、レシピと同一の素材が存在しない場合の汎用性や拡張性を見据えた作りになっているのが今作の奥深さだ。
 
 黒蜜は、私の祖母が鹿児島・沖永良部の出身で、黒糖の産地であることからファミリールーツとして用いていますが、世界的に見たらブラウンシュガーでも応用できる気がします。エスプレッソもマシンがなければコーヒーで、口当たりがよりさわやかなカクテルに仕上がるでしょう。カクテルにおいてもコーヒーのトレンドが高まっていますので、今後はバーでもエスプレッソマシンを置くようになるのではないかと思います。スパークリングワインも、大会ではマルティーニを使用しますが、甲州のスパークリングを使ったレシピが生まれても面白いはずです。

8にまつわる無限のループ。過去2年と、すべてのチャレンジャーからのバトンを手に、世界大会へ

日本代表が挑む三度目の世界大会。2016年に初めて海を渡った「KAWAHORI」(櫻井将人氏)、2017年にTOP3に残った「MARIEL」(佐藤健太郎氏)の思いもつなぎながら、グローバルファイナルの地、メキシコに向かう。
 
 世界大会では楽しさや情熱を伝えたいと思います。私自身がこの大会を通して成長させてもらったとも思いますので、グローバルファイナルならではの難しさや、思いっきりやるべきことなどを受け入れて、自分が表現したいことをきちんと発信してきたい。第1回の櫻井さん、第2回の佐藤さんを近くで見てきましたので、お二人の意見を生かしながらやっていきたいと思います。
 
カクテルのプロモーションが課され、その活動内容や成果が審査項目の一部になるがBLCCの特徴だ。昨年の阿部氏は数字を追いかけた。カクテルの販売数や、それを作ってくれたバーテンダーの数、SNSでの投稿やシェア、アクセス数などだ。阿部氏はそこに、「TALES OF 8」のテーマや表現を加え、「8」にまつわる物語(オチョ物語)や「Find 8」と称して日本大会ファイナルまでの88日間、毎日「8」に関するコンテンツをアップした。

 ホテルに大いに助けてもらえたというところがあります。物事がそろう環境の中で、さまざまな試行錯誤ができますし、お客さまの来店もあります。自分への挑戦でもあるコンペティションが世界を広げてくれました。新しい発見によって仕事への向き合い方が変わり、ホテルでのお客さまとの接し方、会話も変わってくるのです。

世界大会に向けた“オチョ物語”も着実に進んでいる。3月下旬に行なわれた、花で彩るイタリア発祥のアートイベント「東京インフィオラータ2018 in 東京ガーデンテラス紀尾井町」でも来場者に「TALES OF 8」が振る舞われた。
ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町でもカクテルに合わせたフィンガーフードのセットを4月1日から販売。オチョの世界観を楽しんでもらうイベント「OCHO TIME」を4月8日(日)の午後8時に開催した。
また、金曜夜に開催しているDJイベントの中でも、阿部氏がカクテルプレゼンテーションとともに「TALES OF 8」を提供する「GALLERY MUSIC NIGHT OUT with TALES OF 8」も行なわれている。今後はバー・ラウンジを付帯するプリンスホテルのグループ施設でも、このカクテルを提供する予定だという。
バーテンダーのクリエイティビティーは、ホテルにとってのレガシーになる。

「TALES OF 8」は、日本でもなじみ深い「8(八)」がキーワード。数字「8(八)」は、日本では「末広がり」や「八重」など幸運や多数などを意味する言葉でもなじみ深いことから「8」をキーワードとした。横向きにすると「∞(無限大)」になることから、長く愛されるカクテルになるよう願いを込め、キューバ生まれのラムへのオマージュとしてスペイン語で“8”を意味する「オチョ」を名称に取り入れたほか、8枚のミントの葉を使用している。価格は2200円。 Recipe:BACARDI 8 50㎖/Martini Asti Spumante 40㎖/Espresso 30㎖/Muscovado Syrup 15㎖/Fresh mint 8 leaves/Garnish: Coffee powder ミントをシェーカーに入れてつぶす。スプマンテとコーヒーパウダー以外をシェークしてダブルストレインしながらグラスへ。スプマンテをグラスに注ぎ入れ、コーヒーパウダーを振りかける。

阿部氏の渾身のプレゼンテーションは常にオーディエンスを引き付ける魅力を持つ。コンペティションさながらに「TALES OF 8」を振る舞う「OCHO TIME」は4月8日(日)午後8時から開催された。
毎週金曜夜に開催のDJイベントに阿部央がカクテルパフォーマンスとともに「TALES OF 8」を提供する「GALLERY MUSIC NIGHT OUT with TALES OF 8」は4月6日(金)、13日(金)、20日(金)の午後9時から開催。
「Sky Gallery Lounge Levita」では「TALES OF 8」セットも提供中。八角を添えたドライフルーツなど「TALES OF  8」に合わせた一口サイズのフィンガーフード8品のプレートとの「OCHO’S PLATE」は4200円。一口サイズの抹茶チョコレートとゆずタルトはOCHO'S SWEETS  3000円(価格はいずれも税込み・サービス料別)

〔Profile〕
都内のバーやホテルバーでの経験を経て2017年12月より現職。幼少から高校まで野球に専念し、大学では政治経済を専攻したほか、アパレル企業での勤務を経験するなど多彩な経歴を持つ。13年11月日本ホテルバーメンズ協会・メーカー共催ジュニアカクテルコンペティションで優勝ほか、コンペティション入賞・優勝多数。18年2月BLCC2018日本大会に優勝し、メキシコで開催される世界大会に出場する。

Sky Gallery Lounge Levita
ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町 35階
「滝」をイメージしたガラスアートに囲まれた、カクテルラウンジ・バー。ガラス窓からは、刻一刻と姿を変える都心の景色を楽しめる。
営業時間:平日 12:00~2:00
土休日 11:00~2:00
席数: 47席(カウンター15・テーブル32)
全席禁煙
東京都千代田区紀尾井町1-2 ℡ 03-3234-1111

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