さまざまな料理人がいる中で、一人一人が持つ苦悩と挑戦の数々の物語がある。ホテル・レストランの総料理長が食の業界や若手の料理人に向けて伝えたいことは何か。これまでの長い経験の中で、どのようなことに悩み、どのようなことを考え、どのようにチームを創り上げてきたのか。インタビューを通じて後継者育成に向けた取り組み、マネジメント手法などを探るシリーズ「料理人の教育論」を隔週連載でお届けする。
角垣賢(つのがき・まさる)
京都市生。1996 年ホテルボストンプラザ草津開業準備室に総料理長として着任。2010 年おうみの名工受賞。15 年11 月厚生労働大臣表彰受賞。16 年10 月第24 回世界料理オリンピック カリナリーアート金メダル獲得。内閣府認定 公益社団法人全日本司厨士協会京滋地方滋賀県本部会長も務める。
大切にすべきは「人間性」
調理人である前に、社会人として
―冒頭、教育にあたり理念や方針などからお聞かせください。
教育や指導に際し、常に意識していることは人格形成フローです。「思考→行動→習慣→人格」、このような流れを習得モデルとし、料理人としてより、最初に社会人としての礼儀やマナー、組織と個人など、社会的な地位とプロとしての技術を体得していくための「人間性」を磨くことから指導します。
どれだけ優れた知識や技術を有していても、会社の方向性などを正しく理解することができなければ、周囲の協力や理解は得られません。チームとして働く調理の世界だからこそ余計に、仕事を続けていく上で最低限必要だと思うこと、日々の業務に対する責任の重要性、そして私自身の具体的な経験事例に沿った口伝など、日々の仕事・生活を通じてステップアップできる環境作りを行ない、最終的には創造力と好奇心を持って仕事に取り組む料理人となってくれることが理想です。