本連載では、F&B のサービスにむけて、プロフェッショナルになっていくために何が必要なのかを解説していきます。職人として給仕長でありながらグローバルな感性を持ち、顧客満足と利益のバランスを兼ね備えるスペシャリストである必要があるF&B サービスマン。そのF&B サービスの歴史を紐解きながら解説していきます。最終回は原点に戻りメートル・ドテルを振り返ります。
F&B マネージメント
ホテル・レストラン運営コンサルタント
川尻倫明
〈プロフィール〉音楽の勉強に渡仏した際、フランス料理と本場のサービスに感銘をうけフレンチの世界へ。フランス料理店「銀座レカン」を皮切りに「ホテル西洋銀座」のメートル・ドテルとしてF&B に携わる。その後日本各地のホテルでF&B ディレクター、宿泊部長、総支配人等を歴任する。フランス三ツ星レストラン、ロスアンジェルスのファインダイニングなどでサービスを経験。エドモンド・ロスチャイルド夫妻、クリストファー・ヒル国務次官補(当時)などのVIP 担当も多い。1995 年「メートル・ド・セルヴィス杯」優勝。現在はホテル・レストランに特化したコンサルティングを主に活動しており、ホスピタリティ関係の講演、地元英語学校とのコラボで接客に特化した英会話講座開催など、サービススキルとビジネス感覚を持ち合わせもったグローバルなサービスパーソン育成活動を地方から発信している。「広島から世界へ」が自身の育成テーマ。
~メートル・ドテルとは(以下メートル)~
メートルは①職人②心理学者③商店主(経営者)の三つの顔を持っていなければなりません。先月号に「カリスマになろう」と付けた副題ですが、一流のメートルとはまさにカリスマ的存在でした。フランスでは現在でもそうです。アメリカでも一流のレストランでは、この立場を重要視しており、Maître d で通じるくらいです。お客さまと厨房(製造部門)をつなぐ架け橋であり、お客さまの思っていることを察知し、シェフの気持ちも配慮しながら物事を進めていく職人なのです。その上で担当エリアでは人件費効率も意識してオペレーションを進める経営者でもあります。私たち日本のメートルに弱いのは職人でありながら、経営者であることの二つではないでしょうか?②のお客さまの心理を推し量るメートルは比較的多いはずです。日本のサービスマンの得意分野でもあります。しかし、それも最近マニュアル重視型になってきて弱くなりつつあります。実は危機的状況と認識すべきでしょう。高級ホテルでさえ、この三つとも能力の無いスタッフが何割か仕事をしています。優秀なメートルやギャルソンは、必要な時には静かに側に来てくれて、絶妙のタイミングで声掛けしてきますが、お客さま同士のお話が弾んでいるときは遠くから見守っています。