日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏が、日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝えることで、海外からのお客さまをおもてなしするホテル、レストランの力を向上させるためのヒントをお届けしていく本連載。2回連続で南アルプスのふもと、山梨県北杜市で地元・白州の名水の素晴らしさを体現した日本酒「七賢」を造り続ける山梨銘醸にご登場いただいた。「老舗として変わらずに商売を続けていくために必要な変化」をもたらす改善と改革を推進してきた北原対馬氏、亮庫氏兄弟の発想法に、弊社オータパブリケイションズ代表取締役の太田進を交えた鼎談で迫った。今回は後編をお届けする。
瓶内二次発酵のスパークリングで
「日本酒で乾杯」の市場を創出する
島田 スパークリングの日本酒の発想はどこから出てきたのでしょうか。
対馬 そもそも日本のマーケットにおけるアルコール飲料の中で、日本酒が占める割合は6%に過ぎません。そんな中、アルコール全体における炭酸ガスを含む飲料の割合は約60%あります。そのことから日本酒にも泡系が必要なのではないかと考えたのです。
亮庫 研究を積み重ねていくと、瓶内二次発酵の奥深さやそこから生まれる泡のきめ細やかさ、飲んでみたときの付加価値の高さといったものを強く感じることができました。そこで本格的に乾杯に使える日本酒を造ろうと考えたのです。
第1弾として2015 年に発表した「山ノ霞」は、濁りを残したスパークリングの日本酒となりました。ガス圧を高め、シャンパンボトルで製造しました。本格的な泡を楽しめる日本酒によって、普段の乾杯シーンに取り入れてもらうことを目指したのです。
瓶内二次発酵によるスパークリングの日本酒のノウハウを積み重ねることで大きなマーケットを創ることができるのではないかと思い、最初からシリーズ展開を考えました。2016 年に発表した第2弾「星ノ輝」は、シャンパンの製法を使い味わいをさらにドライな方向へ振っています。
島田 そして2017 年、第3弾の「杜の奏」が誕生します。
対馬 「杜の奏」は2017 年10 月1日に発売しました。商品開発にあたっては、他種類のアルコール飲料とのコラボレーションを念頭に置きました。
白州と言えばサントリーのジャパニーズウイスキーだということに思い至りました。ウイスキー樽に日本酒を漬け込んでみたらどうだろうという話になったのです。
サントリーの白州蒸溜所に樽をもらいに行こうと思ったのですが、なかなか良い答えをもらえません。私たちとしてはほかのウイスキー樽では意味がなく、同じローカルの水源で造っているサントリー白州蒸溜所のウイスキー樽と日本酒が出会うからこそ、地域創生というストーリーに結びつくのだという信念を持っていました。