「彼を知り己を知れば百戦危うからず」、有名な孫子の兵法の一つである。現代において経営者はコンペティターの動向を把握し、営業マンは営業先の現状把握が必須。時代は変われども、「相手を知る」という本質は変わらない。一昨年から引き続き『週刊HOTERES』は、人脈マッチングスペシャリスト、TOP CONNECT ㈱代表取締役 内田雅章氏をファシリテーターに、強い組織や成長著しい地域や企業の秘訣を探るべく、魅力あふれるリーダーとの対談を実現。第33 回は今年、産業革新機構などを割当先とする資金調達を実施し、累計調達額約45 億円、有望スタートアップ企業として注目を集める㈱フロムスクラッチ安部泰洋社長に登場いただいた。
注目スタートアップ㈱フロムスクラッチ
データ活用による
「労働生産性の向上」とその取り組み
内田 まずはなぜ「労働生産性の向上」というメッセージを掲げているのか、お聞かせください。
安部 加速度的に超少子高齢化社会へ向かう潮流の中にある日本。減少が予測される国内のGDP、国策である働き方改革推進、そして、先進国において他国より先駆けた高齢化社会問題への取り組みが注目を集める状況にあって、ビジネスを通じて「“先進衰退国”でもある日本の生産性を引き上げること」、これこそが私たちが事業を通して社会に提供できる価値の1 つだと考えています。
内田 フロムスクラッチと「労働生産性の向上」、背景には何があるのでしょうか。
安部 GDP の減少は労働人口減の影響によるもので、その対策は人口を増やす、または仕事の質を上げる、この二つの手段しかありません。しかし前者は中長期的な取組みであり、結果が出るのは20 年、30 年後の話です。日本の経済はすでに切迫した局面を迎えようとしているため、後者を選択せざるを得ない状況であり、国家レベルでも、民間レベルでも「仕事の質を上げる= 生産性の向上」に着手しなければならないといった現実があります。それを実現するために、国をあげて「データを活用した生産性向上」に取り組んでいます。改正個人情報保護法も、その取り組みの一環としてとらえることができるでしょう。
内田 上記を踏まえ、御社はどのような事業に取り組む企業なのでしょうか。
安部 マーケティングプラットフォーム「b → dash」の開発・提供をしています。b → dash は企業のデータ活用経営を実現する、データソリューションです。前述もしたように、企業が労働生産性を向上させるためには、データ活用が必要不可欠です。しかし、ほとんどの企業は、“データをいつでも活用できる状態になっていない”、“データ活用のために複数のツールが導入され作業が複雑化している”、“限られたスキル・知識を持った担当者にしかツールが使えない”といった、データ活用を阻む壁に直面しています。データ活用経営を実現し、生産性を上げていくためには「いつでも」「1 つで」「誰でも」データを使える状態にしなければなりません。これがデータ活用経営の3 条件です。b → dash は、それら3 条件を満たす特徴を有するため、データを活用して生産性を上げていきたい企業の導入が急増しているといった背景があります。