株式会社インテグリティサポート 代表取締役社長 桐明幸弘 ネクストステージ・コンサルティング 代表 大山美和
連載の最初に当たって、まずは我々の提唱する「地域一体再生」とは何かをお伝えしたいと思います。この言葉は、桐明が監査法人トーマツにおいて事業再生支援を専門とするサービス部門を立ち上げた直後から、特に地方の旅館業の再生に関して提案し、本誌でも2005 年に発表させていただいたものですが、その後広く使われる言葉となり、このほかにも「面的再生」なども同じような意味で使われています。今回は、あくまで旅館事業の承継のための地域一体再生をきちんと定義させていただきたいと思います。これによって、日本政府のかかげる「地方創生」に繋がることを読者の皆様に認識していただければ大変幸甚です。
さて、私どもは、この枠組みが旅館を中心とした日本独自の文化やサービスを「売り」とする、地域が一体となったツーリズム産業を展開するための「地域一体再生スキーム」となると申し上げました。では、現在その旅館業の経営上の課題はどんなものがあるのでしょうか。なぜピーク時は全国で7 万軒を誇っていた軒数が半減してしまったのでしょうか。ある専門家に聞きますと、このまま何もしなければ旅館軒数は1万軒以下となるという予想をされています。これでは、とても観光産業の中心となることはできません。まずは、旅館業が抱える共通の経営上の課題をみていきます。