大住 力(おおすみ・りき)
ソコリキ教育研究所 所長
公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」代表
東京ディズニーランドなどを管理・運営する㈱オリエンタルランドで約20 年間、人材教育やプロジェクトの立ち上げ、運営、マネジメントに携わる。退社後、「ソコリキ教育研究所」(研修・講演・コンサルティング)を設立し、前職での経験を生かして、人材育成プログラムを企業などに展開している
info@sokoriki.jp
■ Case Study23
“ 学習する組織” にするために
先日、関東に本社をおく創業が間もなく半世紀続く、ある物流会社に伺った際、3 時間ほどの長時間でしたが、理念の重要性や自社の社会における価値について、代表取締役や幹部社員のみならず一般社員、中には入社してまだ1カ月に満たない社員、そして男性も女性も、年齢や社歴もさまざまな出席者による会合に参加させていただきました。
私も仕事柄、数多くの企業のこうした会合に参加させていただきますが、そのほとんどは限られたメンバーがいつものように話し始め、各人の持論を展開し、それを周囲のスタッフは受動的に聞いていて、最後は代表などがコメントを述べ、これまたいつものように話し、いつものように会議を終えるといったものですが。今回は驚いたことに、参加した社員たちが皆積極的で、しかも、堂々と各人の考えたこと、感じていることを決して否定的でなく、肯定的に事象を捉えて、建設的に論じていました。
最近、多くのリーダーたちが部下について、よく、こうつぶやくのを耳にします。
“ 組織のスタッフは、皆、自分の意見や思いを言わない。”
“ 決して思っていない、考えていないわけではないのに、皆の前だと言わなくなる”
“ 言ってしまうと自分の(余計な)仕事になるとでも思うのか、言わないほうがまし? と思って、言わないのか”などと、よく聴かされる。
あなたの組織のスタッフの皆さまは、いかがでしょうか?
組織論の研究において“ 学習する組織” という言葉があります。簡単に言うと、“ 前進” する組織のことです。反対語は後退、というか足踏みもそれに含まれると思います。つまり“ 思考停止”“止まっている”組織のことです。学習して、前進している組織には、斬新さや躍動感を強く感じます。それは、決して、代表者や数人のリーダーたちだけでは創出できないもので、スタッフの総力がとても必要不可欠と思います。
今回は、思考停止状態にならない組織づくりのために、スタッフの一人一人が、考えていることを言語化して、ほかの組織メンバーに表現したり、表出できるようにする方策を、説明したいと思います。