北村剛史
Takeshi Kitamura
㈱ホテル格付研究所 代表取締役所長
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士、MAI( 米国不動産鑑定士 )
MRICS(英国王室認定チャータードサーベイヤーズ)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である㈱日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事
前回は、ホテルの印象がどのように形成されているのかを考えてみました。ホテルのサービスはハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアが一体となることで顧客ニーズに沿ったサービスを提供しています。これが不可分な関係となってホテルの印象に影響を与える結果、一つの要素の印象がほかの要素の印象に影響を及ぼすという3 要素が一体不可分な関係であるというものでした。例として挙げたのが、上層階にロビー階があるような複合ビルに内在するホテルの場合、1 階のエントランスホールにおいても適切に空調が効いている場合とそうでない場合を比較してみますと、1 階で空調が効いていないと「顧客視点が足りていないホテル」という評価が46.5%、「サービス力が低いホテル」という評価が41.5%、「施設競争力が低いホテル」という評価が34.5%、「スタッフ接遇力が低いホテル」という評価が11%という結果でした。
つまり施設に関する評価であるにもかかわらず、ホテルはハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアが混然一体となることでサービスを提供していることから、ほかのホテル要素にも負の連想が波及している様子がうかがえます。このようにホテルの印象は、一つの要素がほかの要素に影響を与えるという意味で、「幅」があります。さらに、この「幅」とともに重要なポイントが、「深さ」でした。例として、ハードウエアに関する「客室通路幅」をご紹介しました。法令上両サイドに客室があれば1.6m 以上の客室通路幅が求められますが、法令上求められている幅を超えて客室通路幅が用意されている場合には87.5%の人が高い「快適性」を感じると答えており、さらに84%の人が「快適性」に加えて高い「グレード感」をも感じ取っていたのです。