いち早く日本にフランス料理の新風を送り込んできた㈱ひらまつ。1982 年に創業者平松博利氏の思想の下、「ひらまつ亭」という1 軒のレストランから出発した。昨年6 月、盤石な経営体制を構築するために社長交代を決断。上場企業として総売り上げ500 億円を目指し、レストランと新たに着手したホテルの両輪で事業を展開する。新社長として就任した陣内孝也氏に経営理念や人材育成などについてお伺いした。
福永 高級フランス料理店を代表する企業であり、株式上場も実現され、ますます発展されていらっしゃいます。最近ではオーベルジュ型のホテル運営にも着手され、レストランとホテルの両輪で店舗を展開されています。始めに店舗数など、御社の現状を教えていただけますでしょうか。
陣内 レストランとカフェを合わせて32 店舗、ホテル3 店舗を運営しています。スタッフは約700 人でこの春も新卒140 人を採用いたします。かつては料理人が新卒の60%を占めていましたが、ホテル事業の参画により、現在は料理人とサービススタッフともに50%ずつの割合です。サービススタッフはホテルやブライダルを目指す者も多くなっています。
福永 ホテルやレストランの厨房は人材不足で悩んでいる話をよく耳にする中、多くの人材を採用されていらっしゃいます。採用に向けてどのような活動をされていらっしゃるのですか。
陣内 料理人につきましては平松が作り上げてきた長年の実績と本場フランスに店舗があること、三つ星シェフとの提携があることから調理専門学校を中心に採用をしやすい状況にあります。加えて当社にはフランス料理とイタリア料理があり、さらに伝統的な正統派フランス料理からカジュアルなものまでさまざまなスタイルがありますので、いろいろな技術を習得することができます。一般的に、料理人を目指している8 割が将来独立を希望しています。多くの者は3 ~ 5 年で職場を離れて、2、3店舗経験してから独立します。新たなお店を見つけても労働環境や条件が異なりますので不安定な生活を強いられることもあるでしょう。ところが当社の場合は退社せずとも勉強ができますので、安心して10 年間修業して独立することが可能です。その部分も料理人の採用につながっています。