北村剛史
Takeshi Kitamura
㈱ホテル格付研究所 代表取締役所長
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士、MAI( 米国不動産鑑定士 )
MRICS(英国王室認定チャータードサーベイヤーズ)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。ホテル・旅館の不動産鑑定評価会社である㈱日本ホテルアプレイザルの取締役。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では「ホテル・旅館の人格性、パーソナリティー」をテーマに研究活動に従事
今回は、2020 年以降のホテルマーケット像を想像してみたいと思います。昨今ダイレクトに顧客がホテルを選択するような個人消費時代に突入しています。そのような個人消費時代においては、個別ターゲットを想定した個人のニーズに合致したサービス提供が求められ、事前の期待を適切に伝えるとともに、その期待を上回ること、つまりホテルの利用日当日に顧客が有する「葛藤」を「適切な人が、適切なタイミング、適切な場所で適切な方法かつ適切な所作」により「解決」することで期待を上回ることができ、強く顧客の印象に残ることになります。
以前ご紹介しました通り、そのようなエピソードは長期的に記憶に残り、かつ複数のエピソードが重なることで、背後のホテル側の意図を伝えることができます。長期記憶とは「エピソード記憶」と「意味記憶」に分けることができます。前記が「エピソード記憶」で後記が「意味記憶」となります。この二つの記憶に基づいて、ホテルの体験に基づいた印象が形成されるのです。「葛藤」を適切に「解決」し、かつ「事前の期待を超える」ためには、「適切な場所」、つまりハードウエア、「適切なタイミングで適切な方法」で、つまりソフトウエア、そして「適切な人」が「適切な所作」で、つまりヒューマンウエアのホテル3 要素が完璧に調和している必要があります。そのように考えると、今後の個人消費時代に向け、かつ巨大化するインバウンド市場に対する取り組みを含めて考えると、ホテルのコンセプトやホテルに対する事前の期待を明確にすること、およびそれら事前期待を忠実にかつそれを超えるサービスとして現場に落とし込むために、サービス面の取り組みと同時に適切なハードウエアの管理が非常に重要な視点となります。