「非日常の体験」として、職種を問わず人々のあこがれである日本のホテル業界は今、現場から経営者に至るまでかつてない程のさまざまな問題に直面している。そこで今回、日本のフランス業界の第一人者として精力的な活動を続けている中村 勝宏氏がこれまで業界発展に貢献をしてきた「本物の業界人」たちとの対談を通じて、業界に苦言・提言・助言を投げかける。
構成・中村 勝宏 本誌 木下 賀文
酒と料理の相性
中村 日本の酒は今後本格的に世界に認知されるためにも、様々な改革が求められるでしょう。ぜひ、頑張って頂き多くの人々に飲んでもらいたいものです。
田崎 そうですね。ここで個人的な思いを申し上げますと、日本でソムリエという職業をしていて、ワインが売れればよいというものではないのです、よくソムリエは、日本酒は関係がないというふうなイメージをもたれていることがありますが、まったくそれは論外で、今世界中のソムリエが日本酒に興味を持っています。世界ソムリエコンクールでもブラインドテイスティングなどで日本酒を出していますし。その点からも日本のソムリエはもっと日本酒を勉強しなくてはならないと思いますね。和食と日本酒の相性についてもっときちんと定義づけをしていくべきだと思います。
中村 今、田崎さんが言われたことは、非常に大切な事ですね。我々フランス料理の料理人にも同様の事が言えます。料理作りの背景には、必ず風土という物が存在しています。日本で作る、日本人のためのフランス料理を考えた場合、やはり、日本の風土を意識したあるいは、基調としたフランス料理を作るべきでもあります。それがためにも我々は、今日までずっとフランスばかりを追っかけてきましたが、それも、大切であるけれど、一方では、日本の風土をもっと知り、日本料理を勉強し、日本の風土にマッチしたフランス料理を目指していくべきだともおもっています。私は、26 歳で向こうに渡り、40 にして帰国しましたが、フランスの風土を肌身で感じてきただけに最近、そのことの大切さを痛切に感じております。