株式会社Aカードホテルシステム(本社・東京都千代田区)は3月12日、大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて同社システムの加盟施設を対象とするイベント「第27回Aカードトップ会」を開催した。
同社は独立系ホテルを中心に、キャッシュバックシステムが備わったポイントカード「Aカード」を運営しており、2025年1月末時点で471ホテル(5万1003室)と30レストランの計501施設が加盟し、会員数は約158万人を有する。
例年、加盟施設が一堂に会する同イベントを開催しており、ホテル業界の近況や出張ビジネスパーソンの宿泊動向の解説をはじめ、識者による講演、加盟ホテルが手掛ける取り組み事例などについて紹介されるのが特徴。
今回は関係者を含め178人が参加し、加盟ホテルの取り組み事例として2023年12月からリニューアルされた「モバイルAカードの活用事例」のリレー講演、「外国人採用事例」についてパネルディスカッション形式で執り行われた。



はじめに、代表取締役社長の内藤 信也氏より国内ホテルの市況について解説。RevPARの全国平均において2019年比で2024年は27%増で推移しており、各エリアで売上上昇にばらつきがあるのはインバウンド比率やその内の欧米豪の比率の高低が大きく影響していることを指摘。
また、ホテル業界の給与引き上げに関する報道事例を紹介し、新卒初任給の引き上げやそれに伴う既存従業員の給与をベースアップを実施する動きがあることを発した。そのほか、外資系チェーンによる宿泊特化型ホテルの国内マーケットへの進出が活性化していることにも触れ、国内屈指の加盟店舗数・加盟室数を有し年間で約150万人泊の需要を獲得する同社システムの優位性を語る。
会の中で約150万人の宿泊需要(2019年・2024年の水準)がコロナ禍の期間中、2020年は3割減、2021年2割減、2022年1割減と推移し、業界平均に比べて減少幅が大幅に少ない結果となっていた。これはコロナ禍でも需要変動が少なかったメタルカラーやブルーカラーの層を会員として囲い込んでおり、同社システムの強みの一つである「キャッシュバックシステム」がその層の獲得に大きく影響していると見られる。
続いて、営業開発部 部長の瀬上 悟氏より会員や加盟ホテルへのアンケート結果をハイライトで紹介。会員アンケートは2025年1月調査時、4971人(全会員の0.3%の割合)の回答結果をまとめたものだ。
同社は2009年より同調査を実施しているが、調査開始以来、各企業の出張規定における「実費精算」の割合が59%と過去最高に達したという(定額制34%)。実費精算の出張規定の1泊当たりの平均利用金額は8354円(前年調査時7751円)と年々上昇傾向にあり、昨今の全国的なADR重視の販売戦略が影響していると見られる。
2025年度から国家公務員の出張に伴う宿泊規定において、東京都の場合は1万9000円、大阪府の際は1万3000円を上限とした実費精算に移行するニュースが現在注目されているが、これを機に各企業の宿泊規定が見直され実態に即した規定に変更することをホテル業界としては期待したいところだ。
基調講演では有限会社a tempo 代表取締役の中村 泰良氏が「業務平準化と効率運営」をテーマに登壇。同氏はホテル運営現場や本社経営部門に長年従事し、独立後は施設のトータルサポートを手掛け、マニュアル作成を通じた業務平準化や生産性向上、人事評価への紐づけに精通する。
業務の俗人化が伴わなければ人手不足対策としてのDX化や採用強化などの施策が効果を発揮せず、講演の中では経営者が意識すべき組織スタンス、スタッフの属性に合わせたマネジメントの具体的手法などを紹介した。


加盟ホテルの取り組み事例の一つ目は「モバイルAカードの活用事例」として営業開発部 営業シニアマネージャーの宮崎 義一氏がモデレーターを務め、アクセスイン刈谷 支配人の岡部 清隆氏、スマイルホテル大阪中之島 支配人の百々 梓氏、ホテル梶ヶ谷プラザ 副支配人の永井 久裕氏、スマイルホテル奈良 支配人の杉本 和海氏が講演者として登壇。
2023年12月のリニューアルを経て、チェックインやポイント付与などアプリのみで一気通貫でできるようになり、会員登録の際のスタッフ側の労力削減、申込書の保管不要、会員カード紛失の際にでも対応可など、利便性を大きく実感しているという。
オペレーション面での負担軽減のみならず、カードレス化によりゲスト側にとってもチェックイン時間の短縮、スムースなポイント付与とその確認、Aカード加盟店を容易に検索可能といった双方向でプラスに転じているとし締めくくった。
その後、浜松ホテル 専務取締役の諸川 大氏がモデレーターを担い、センターホテル成田1 総支配人の藤崎 茂貴氏、延岡アーバンホテル 専務取締役の木村 重俊氏、ホテルピースアイランド那覇 取締役本島地区統括支配人の上原 秀成氏がパネリスト登壇し「外国人採用事例」をテーマに議論。
外国人採用において、日本の文化やマナーを学ぶために時間を要すること、母国に帰省するために長期休暇が必要になるといった課題とする面もあるが、日本人スタッフと比較して遜色のない業務を行えていること、インバウンド対応ができることで集客の実績が上がったなどを利点として述べた。
人手不足が業界で加速化する昨今、同セッションでも日本人の応募が特に深刻化していることが挙げられた。大阪・関西万博におけるアルバイトの高額時給といった話題も世間に上っているが、採用における企業側の柔軟な姿勢が今後さらに求められていくのであろう。
●関連記事「Aカードホテルシステム社が2025年版『出張ビジネスパーソンのホテル利用実態』&『経費アンケート』結果発表」
https://www.hoteresonline.com/articles/14048
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文・オータパブリケイションズ 臼井 usui@ohtapub.co.jp