水戸市内のシティホテルや宿泊特化型ホテルなど18ホテルが加盟する水戸地区ホテル連絡会。水戸エリアのホテルも、新型コロナの影響を受けたものの2022年ごろから回復傾向となり、昨年5月の5類移行後は稼働重視からADR重視へシフトしているという。本項では、同ホテル会の佐藤 義司氏に水戸エリアのホテルマーケットの動向について話を聞いた。
水戸地区ホテル連絡会
佐藤 義司氏
(ホテル テラス ザ ガーデン 水戸 宿泊支配人)
稼働が下がるもADRが上昇し、RevPARも前年比増に
■初めに水戸地区ホテル連絡会の概要と活動内容を教えてください。
水戸地区ホテル連絡会は2014年2月に設立し、今年で10周年を迎えます。現在18ホテルが加盟しています。稼働率とADR、RevPAR、3カ月先のオンハンドなど共有することと、2カ月に一度のペースで情報交換会や事前にメールで通達した話題についての意見交換をしています。コロナ禍では会合をリモートで実施していましたが、一昨年ぐらいから再度実際に集まる形に移行しました。会場は加盟ホテルの持ち回りで、幹事ホテルが会合を仕切ります。その後、自由参加で懇親会も行っています。
入会規定については会員ホテルの3分の2以上の賛同を得ることが条件で、加盟料や更新料はいただいておりません。
■昨年の加盟ホテルの営業状況についてもお聞かせいただけますか。コロナ前の2019年の水準に回復しているのでしょうか。
2019年の年平均稼働率は69.7%、ADRは6,813円で、2023年の年平均稼働率は75.3%、ADRは8,618円でした。昨年は一年間押し並べて稼働、ADRともによかったですね。RevPARの伸びも順調にプラス推移しております。
今年の1〜3月は前年比で稼働がやや下がった一方、ADRが上がってRevPARも前年比で10%以上、ホテルによっては20%以上あがっている施設もあります。2月、3月は「水戸の梅まつり」の効果がでています。1〜3月の稼働が抑えめだったのはADR重視にシフトしたことに加えて、当ホテルもそうですが改装中のホテルなどがあって母数が変わったこともあります。これから改装を計画されているホテルもあるので12月以降からまた稼働が下がるかもしれませんね。この辺りは円安に伴う安近短の動きに注意が必要と考えています。
■業績の回復はいつごろから兆しが見えてきたのでしょうか。
2022年の3月ぐらいから回復し始め、全国旅行支援で需要が高まってオンハンドも改善しました。このときは直近の予約が多くなり、さらに昨年5月8日の新型コロナ5類移行が好影響をもたらしました。
とくに地元の大手企業が動き始めたところで状況が大きく変わりましたね。このエリアは日立グループのお膝元ですから日立製作所、日立ハイテックをはじめとした日立グループ企業や、東海村にあるJAEA(日本原子力研究開発機構)、さらには昨年ひたちなか市に進出したJX金属が動くとビジネス需要が増えるとともに海外からの訪日客も増え、水戸地区にも宿泊や会議宴会の需要が生まれてうるおいます。ちなみにオンハンドの状況は右肩上がりになり、5月度では月初で水戸エリアの平均で60~70%は取れています。
■業績の回復には販売戦略の変化もあったのでしょうか。
そうですね。弊社では特に連休やイベント開催日においてはダブルオキュパンシーで受注することに注力しています。その上でベース稼働を上げられれば販売が楽になり収益アップとなります。どのホテルも一緒ですが(笑)。
■東京はインバウンド需要がホテルマーケットを牽引していますが、水戸エリアのインバウンド率はどのぐらいなのでしょうか。
これもホテルによってだいぶ異なりますが、インバウンドが多いホテルでは半数近くに及ぶという話も聞きます。そうしたホテルは稼働もよく、ADRもインバウンドの比率に比例して高くなっていますね。
東京はインバウンド需要が強く東京ホテル会の4月度のデータではADRが18,500円を超えておりますが、水戸はそれに追いついていませんね。例えば旅行エージェントとうまく交渉して富裕層のインバウンドがコンスタントに取れるとよいのですが。
音楽のビッグイベント再開に水戸のホテル業界も期待
■そのほか最近、会合で話題に挙がったことがありますか。
例えば今年3月の会合ではエコ清掃が話題に挙がりました。清掃人員不足に対応する施策で、清掃を3日に1回にする、毎日清掃してほしい場合は料金をお支払いいただいているなどの話しがありましたね。
エコ清掃は以前より導入しているホテルも多く、当ホテルでも賛同していただいたゲストには1泊につき直営レストランで利用できるワンドリンクチケットを1枚進呈しています。このチケットではソフトドリンクだけでなくビールやワインなども提供しています。
■コストを掛けてもスタッフの方の労力を削減したいという意向なのでしょうか。
そうですね。特に直営で清掃スタッフを雇用しているホテルは厳しいと聞きます。この水戸エリアでもホテルで清掃スタッフの直雇用をしているケースが多いですね。理由は様々ですが、コロナ禍で直営に変更しいまは需要が戻り稼働があがって清掃の手が回らないというケースも見受けられます。無論スタッフの労力の削減もそうですが、一方でエコ清掃の本当の意味を伝え、かつゲストへドリンクサービスなどの付加価値をもって、水戸地区のレピュテーションマネジメントの底上げにつながればと思います。
■その他の話題も挙がっていますか。
人件費や食材費、水道光熱費の高騰も話題に挙がっています。また、去年はインボイス制度開始に際して領収書発行の問題などもありました。そのほか、全国旅行支援で茨城県は「いば旅」というプロモーションがあり、会合ではそれに対する各ホテルの動向など生の情報を知ることができました。実施期間についても水面下でいろいろな噂が流れていましたね。
■水戸エリアの課題は何だとお考えですか。
やはり、水戸地区を盛り上げるために1室平均単価を1円でも上げていくことが一番だと思いますね。そのためには、もう安売りの時代は終わったことを、われわれ水戸地区ホテル連絡会が中心になって常に発信していくことが大切だと考えています。
■今後、さらに業績が上向くような期待できるイベントなどがありますか。
水戸エリアのホテルが特に強いのは、2月から3月にかけて開催される「水戸の梅まつり」の時期です。また、大学受験需要のあるときや、秋の観光シーズンも強いですね。
そのほかコロナ前は水戸市の隣にある、ひたちなか市の国営ひたち海浜公園で、8月上旬に2週5日間にわたって開催されていた日本最大級の音楽フェス「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」(コロナ前は5日間で33万人の観客動員数)が集客の大きなチャンスでした。しかしながらコロナ禍で4年連続中止となり、2022年からは千葉市の蘇我スポーツ公園に会場が移ってしまいました。
この「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」が蘇我スポーツ公園に加えて、今年9月14、15日および9月21、22、23日にはひたち海浜公園でも再度開催されることになりました。このイベントは、来場客だけでなく、イベントスタッフや設営スタッフの需要も期待できますね。また、国営ひたち海浜公園は、GWごろにはネモフィラが咲き、秋にはコキヤが美しく、この時期も集客が見込めます。こうした契機を生かしていきたいですね。