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特別企画 札幌市内ホテル連絡協議会

インバウンド需要増が追い風に、今後は繁閑の差を考慮したきめ細やかなレートコントロールで対応

2024年06月03日(月)
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 シティホテルを中心に30施設が加盟する札幌市内ホテル連絡協議会。2023年のホテルマーケットは、定例イベントの通常開催に加え、アドベンチャートラベルやインターハイ開催などビッグイベントもありほぼコロナ前の水準に戻りつつあるという。順調に回復する札幌におけるホテルマーケットの動向や今後の展望について同協議会の宿泊部会長である泉水 誠之氏に伺った。
 



札幌市内ホテル連絡協議会
宿泊部会長
泉水 誠之 氏
(札幌プリンスホテル 総支配人)

目玉イベントの復活で稼働率、ADRともに2019年に接近

■札幌市内ホテル連絡協議会の設立と活動内容について教えてください。
 
 札幌市内ホテル連絡協議会は2007年の11月に発足しました。シティホテルを中心にミドルクラスのホテルが加盟しており、現在は30施設9187室が登録されています。主な活動内容としては奇数月に定例会を開催しており、それに向かって宿泊部会、レストラン・ブライダル部会、コンベンション部会に分かれて話し合いを行い、結果を定例会で報告しています。
 
■それでは2023年の状況についてお聞かせください。加盟ホテルの業績はコロナ前の2019年の水準に到達されていますか。
 
 月別の濃淡はありますが、年間通して見ると2019年に近づいてきていると認識しています。加盟ホテル全体の稼働率は2019年が74.8%で2023年は72.6%、ADRは2019年が13,401円で2023年は15,175円、RevPARは2019年が10,023円で2023年は11,017円となっております。
 2月の「さっぽろ雪まつり」やその後の支援割、7〜8月には夏のビアガーデン、北海道マラソン、加えて36年ぶりのインターハイも開催されました。こうしたことも結果によい影響を及したと思われます。
 
■朝食の提供スタイルをコロナ前に戻す傾向がありますが、札幌でも変化がありましたか。
 
 ホテルによってさまざまです。セットメニューの提供もありますし、ずっとブッフェ形式のレストランもあります。ブッフェの中でライブ感を出したり、北海道の食材にこだわったり。夜は営業しないなどホテルごとの取り組みがあることが見て取れます。
 
■宴会も回復しつつある状況ですか。
 
 一般宴会につきましては周年記念やインセンティブなども増えてきている状況ですが、ブライダルは現行、回復していませんね。

 

インバウンドが4割を占め滞在スタイルも多様化に期待

■次にインバウンドについてお伺いします。全体に対してインバウンド需要は何割ぐらいになっていますか。また、客層に変化がありましたか。
 
 札幌市内全体では1月、2月は5割、平均すると4割ほどがインバウンドではないかと思います。国別で目立つのはフライトが増便されたこともあり、韓国からお客さまが増えた印象です。夏には台湾のお客さまが非常に多く、冬の「さっぽろ雪まつり」の時期も中国の方について2番目でした。
 
■インバウンド4割は増えてきている印象です。その分オンハンドもよい状況ですか。
 
 予約について繁忙期は早く動きますが、予約サイクルが直近化しているのでそのほかの時期は1〜2カ月ぐらいで動いている状況です。だから団体などベースになる予約と合わせてお客さまを獲得していく必要があると思っています。
 
■インバンドが増えたことで北海道の滞在ニーズが変化したと思われますか。
 
 昨年、アジアで初めてアドベンチャートラベル(AT)のサミットが行われ、これから具体的に札幌を拠点に旭川や釧路などに行かれるなどハブ アンド スポークのような現象が起きるのではないかと期待しています。欧米からのお客さまも増えたらよいですね。
 サイクリングをされる方からは、これだけ舗装された道が整備をされているのは海外ではなかなかないので、数回に分けて北海道を周遊するような楽しみ方もあると伺いました。スキー場の人気もニセコ一極集中から富良野などいろいろなところに広がっているので、滞在目的も多岐にわたっていくのではないでしょうか。

 

課題はコスト増と人手不足、有志ホテルが合同求人説明会実施

■昨年から電気代や食材のなどコスト増が顕著になってきましたが、対処策についてお聞かせください。
 
 宿泊部門は清掃費、水道高熱費率が引き続き上がっていますので、効率のよい運営が求められています。札幌市内のホテルは繁閑の差が強く出るので、多くのホテルが需要を見極めてレートレベルの適切化を行っています。ただ単価を上げる場合も、体験価値をキーワードに付加価値のある商品づくりをするホテルが増えています。
 また、需要の高いときはトリプル需要や家族連れを取り込むことで人員稼働率を高め、ADRを上げる施策も見受けられます。サービス料を10%から13〜15%に引き上げるホテルもでてきました。
 
■そのほか昨年、ホテル会で話題に上がったことがありますか。
 
 人手不足の話は各ホテルから出ています。ホテルの従業員不足に加え、委託先の清掃スタッフなど。全国で展開している清掃会社は繁忙期に合わせて他県から応援に来りようですが、2〜3月の札幌が一番需要の高い時期に清掃が追いつかずに稼働制限を余儀なくされるホテルもありました。
 
■人手不足への対策も講じられていますか。
 
 札幌を含め業界内で賃金アップにも踏み込んでいますし、ニセコでは時給2000〜2500円でパートを募集しているという話も聞きます。やはり賃金と需要は相関関係が強いので。
 また、当協議会では有志ホテルが共同で、新卒・中途を含めて求人説明会を行いました。しかし、応募状況は以前よりは改善してきていると思いますが、まだコロナ前と比較をする十分ではないと感じています。
 
■DXを使って人手を補おうという動きもあるのでしょうか。
 
 自動チェックイン機を導入したり、予約からシステムを組み込んだり、デバイスを使ってインフォメーションを提供するところや、問い合わせも直接スタッフが受ける前に自動音声機で振り分けるところも見受けますね。
 
■今年の見通しについてもお聞かせください。
 
 繁閑の差が大きく出る一年になると思っています。繁忙期については、定例イベントが戻ってきていて、加えて反動需要も出ています。稼働が高くなり需要も強まっているので今年の2月のADRは前年比で3割増、市内ホテル全体で5割ぐらいがインバウンドというような状況です。一方、閑散期は市内のホテル供給が増えていますので、稼働が下がってきたときには供給過多になると思っています。
 新千歳空港の発着数が国内も海外もまだコロナ前に戻っていないと聞いています。また、バスのドライバー不足の問題などもあります。これらについては今年1年で解決するとは思えませんので、見極めが大切だと感じています。
 また札幌のイベントについてもさっぽろ雪まつりやビアガーデン、よさこいなどは制限なく行われますが、昨年のようにアドベンチャートラベルのサミットやインターハイなど大きなイベントがないので裏の年かもしれません。音楽イベントなどは徐々に開催されてきておりますので、そういうものをしっかりキャッチアップしてレートレベルに反映させていくことが必要だと考えています。

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