HOTERESの月刊化、そしてこの2月に創業70周年を迎える小社に対し、海外のトップホテル企業はじめ世界で活躍する諸氏からさまざまなメッセージが寄せられている。本編では2カ月間にわたり海外から寄せられたメッセージを紹介する。
ザ・ペニンシュラホテルズだからこそできるクオリティーの提供
まずはHOTERESの月刊化、そしてオータパブリケイションズの70周年おめでとうございます。長きにわたる業界へのサポートに感謝申し上げます。
私たちザ・ペニンシュラホテルズは、1928 年に開業したザ・ペニンシュラ香港を旗艦店に、上海、北京、東京、ニューヨーク、シカゴ、ビバリーヒルズ、ロンドン、パリ、イスタンブール、バンコク、マニラという世界の主要都市で12軒のラグジュアリーホテルを所有・運営しています。
私たちの特徴は展開形態と、小さいホテルグループであるからこそほかにはないラグジュアリーホテルとしてのクオリティーを保てていることと考えます。
展開形態としては、ザ・ペニンシュラホテルズは、運営するどのホテルも私たちグループで所有をしています。だからこそ、自社のブランドプロミスをグループ全体に浸透させ、戦略的なビジョンをどのように描くか、何をしたいかを全体で同じ方向を見ることができるのです。
また、そのような体制であり、そして小規模なホテルグループであるからこそ、先ほど申し上げたようなほかにはないラグジュアリーホテルとしてのクオリティーをお客さまにお届けすることができていると言えるでしょう。
マーケットは回復基調。
一方で慎重に見なくてはならない要素も
2023年は旅行需要の回復もあり、ADRを中心に業績が大幅に回復をしてきました。特にアジア圏以外の欧米の需要回復は顕著で業績の回復に貢献をしています。一方、アジアのマーケットを見ると中国のマーケットの回復が遅れており、2019年のレベルまでは達していません。しかし、着実に回復の傾向は見えていますので、2024年以降はこれからより良くなっていくでしょう。特にザ・ペニンシュラホテルズの旗艦店であるザ・ペニンシュラ香港や、ザ・ペニンシュラ上海、ザ・ペニンシュラ北京においては中国マーケットの回復が今後の鍵を握ることになると言えるでしょう。
また不安定な世界情勢も慎重に見なくてはならないと考えています。実際、2023年に開業したザ・ペニンシュライスタンブールは、直前に発生したトルコ・シリア大地震の影響も受けました。
ザ・ペニンシュラホテルズの人材育成
今後のホテル運営を考える時、人材の確保、そして育成は非常に重要なテーマです。私たちザ・ペニンシュラホテルズは常にスタッフを大切にすることを継続してきました。過去にSARS(重症急性呼吸器症候群)や、今回の新型コロナウイルスによるホテル需要が大きく減退した時も、スタッフの雇用を維持できるよう最大限努めてまいりました。この姿勢は今後も変わりません。
一方、採用の際は、若い人にどれだけホスピタリティー業界の魅力を伝えるのかというのは重要な課題です。ITやスタートアップ企業などさまざまな選択肢がある中で、この業界を選んでもらうために私たちが何ができるのかを考えなければなりません。
ザ・ペニンシュラホテルズではトレーニングなど人材開発に力を入れています。グループホテルへの研修制度をはじめ、長期的な異動を希望するスタッフを積極的にサポートするなど、さまざまな工夫をしています。
そうした人材開発への取り組みの結果、ザ・ペニンシュラホテルズでは自社内で成長をし総支配人になった人材が複数います。また、若手のマネジメントクラスの教育にも力を入れており、各ホテルのマネージャーの多くがグループ内のホテルで育った人材であることも私たちの誇りです。例えば、現在ザ・ペニンシュラシカゴのマネージャーを務めているスタッフはフィリピンのマニラで入社し、トレーニングを受けながらキャリアを積みました。また2007年の東京の開業時に入社した若手スタッフが、シカゴやニューヨークで経験を積み、パリの開業を手伝い、そして現在では東京に戻りシニアマネジメント職に就いています。このような事例は数えきれないほどあります。
ザ・ペニンシュラロンドンが開業
私たちザ・ペニンシュラホテルズのトピックとしては、昨年開業したザ・ペニンシュラロンドンです。グループとして12軒目の、イギリスに初進出となったホテルです。世界有数の高級住宅地ベルグレイヴィアの中心地、ハイドパークコーナーにも至近のバッキンガム宮殿の庭園の向かい、ウェリントン・アーチを臨む交差点に位置し、グリーンパークなどの王立公園やウェストミンスター宮殿、人気デパート「ハロッズ」、有名ブティックが建ち並ぶボンドストリートなど、ロンドンを代表する観光スポットへも徒歩圏内にあります。また、ホテルの外観は、ベルグレイヴィアの歴史的建造物と優雅に調和するように設計され、建築家ピーター・ マリノ氏がデザインした館内インテリアに窓から自然光が降り注ぎ、モダンで洗練された美しさをもつ。「ホテルが建つ土地の文化を取り入れる」というザ・ペニンシュラホテルズの経営哲学を反映しています。
ザ・ペニンシュラホテルズでしか提供できない価値
2024年以降を考える時、先ほどのマーケットの回復や世界情勢も重要ですが、私たちが大切にしていることは、いかにお客さまと関係を強固なものとし、再び私たちのホテルを選んでいただけるようにするかということです。それを実現するためには基本的なホテルとしてのサービスはもちろん、一人ひとりのお客様に寄り添う価値を創出することが重要です。
そのためにザ・ペニンシュラホテルズではハードへの投資はもちろん、先ほどの人材への投資なども通じて、私たちでしかご提供できない価値をお届けし続けていきたいと考えています。
Profile
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにて経済学士号取得、英国勅許会計士と香港会計士公会の会員。2002年2月代表取締役およびCEOとして同社に入社。同社のほとんどの事業体で取締役を務める。イギリスのプライスウォーターハウスとバークレイズ・デ・ゼット・ウェドでキャリアを開始、その後1986年に香港に戻ってシュローダー・アジアに入社。 1996年から2002年まで、MTRコーポレーションのファイナンス・ディレクターを務める。 スワイアパシフィック社の独立非常勤取締役で、香港マネジメントアソシエーション会員、ワールドトラベル&ツーリズム委員会会員であり、香港大学ビジネス・アンド・エコノミクス学部の委員会にも属する。