今回は北海道において札幌市に次ぐ人口規模を抱える旭川市を取り上げる。同市は軍都として開けた歴史があり、農業や食料品、パルプなどの製造業が盛んである。「旭川市旭山動物園」の他、豊かな自然の観光資源を抱えている。以下に旭川市のマーケットをみていこう。札幌市、北海道のマクロマーケットについては前回(『週刊ホテルレストラン』2023年11月10日号)の札幌市編を参照していただきたい。
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1.マーケットポテンシャル
旭川市は北海道のほぼ中央に位置し、大雪山系の麓、上川盆地に広がる上川総合振興局(以下上川エリア)の中心都市である。北海道の道庁所在地であり、行政や経済の中心都市である札幌市は同市の南西に約 110㎞離れた地点に位置しているため、札幌市の影響は小さく、周辺に拠点となる都市もないため、独立した都市勢圏を形成している。
旭川市の自市内就業率は 91.8%で、ほぼ自市内で完結している。都市勢圏は東神楽町、鷹栖町などからなる 1市8町(旭川市含む)となっている。上川エリアは南北に伸びる長い盆地であり、西部は山間部に阻まれ勢圏の延伸は見られない。周辺都市への影響力が強く、旭川市への通勤・通学流入は東神楽町が 52.1%、鷹栖町が 51.8%、当麻町が 35.2%、比布町が 34.2%、東川町が33.6%と高くなっている。
旭川市の商業拠点性指数(※1)は1.07で、消費の流出と流入の均衡とれている状況である。市内には上川エリアで唯一 3万m2以上の店舗面積である「イオンモール旭川西」(店舗面積39,986m2)が位置しており、また、エリア内の他都市と比較して大型店が多数出店している。(図表1、2)
旭川市の人口は 32万 4186人(2023年 1月1日現在)で、北海道の人口のシェア 6.3%を占めている。北海道の中では札幌市に次ぐ道内2位の人口規模を有している。その他の上川エリアの主要都市を見ると、名寄市が 2万 6020人、富良野市が 2万 223人、士別市が 1万7283人で続いている。上川エリアには10万人以上の人口規模を有している都市が旭川市のみであり、旭川市の人口集中が顕著である。
過去5年間の増加率(23年/ 18年)を見ると、旭川市は▲ 4.7%と減少傾向になっている。その他の上川エリアの主要都市と見ると、東川町が 3.3%で、エリア内で唯一の増加都市となっている。これは東川町が旭川空港からのアクセスが良いことや、隈研吾氏デザイン監修の温浴施設やサテライトオフィスの設置をするなどして、移住を活発に推進していることが要因となっている。それ以外の都市は全てマイナストレンドとなっている。(図表3)
旭川市の年齢構造を見ると、若年人口比率は 14.9%、適齢期人口比率は 17.3%で、若年人口比率、適齢期人口比率ともに全国値(16.7%、20.9%)を下回っている。その他上川エリアの主要都市を見ると、若年人口比率は東神楽町が 20.1%、鷹栖町が 17.9%、東川町が 17.8%で全国レベルを上回っている。適齢期人口比率は主要都市全てで全国レベルを下回っているが、名寄市が 20.7%、上富良野町が 20.2%で比較的高い値になっている。高齢者(65歳以上人口)比率を見ると、旭川市は34.6%で全国値(28.7%)を上回っており、高齢化が進展していることがわかる。その他上川エリアの主要都市でも東神楽町以外は 30%以上が多く、中には 40%を超える都市もあり、広域的に高齢化が進展していることがわかる。
(図表4)
将来推計人口をみると旭川市はすでに減少フェーズに突入しており、2045年頃には 2015年ベースから 27%程度減少すると推計されている。その他上川エリアの主要都市をみると、東神楽町のみ 2030年頃まで 2015年ベースを維持するが、それ以外の都市は旭川市同様減少フェーズに突入しており、将来的に 2015年ベースの 50%~ 80%程度になると予測される。上川エリアにおける旭川市の人口規模的優位性は将来的にも変わらないものの、東神楽町や東川町など、旭川市のベッドタウンになっている都市が比較的減少幅が小さく、上川エリアの中では人口ポテンシャルが比較的高くなっている。(図表5)
※1 商業拠点性指数 商業地のレベルの高さを意味し、周辺から消費が流入している拠点性の高い商業地かどうかを判断する基準。指数が1より大きいほど消費が流入して拠点性が高く、1より小さいほど消費が流出している。
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2024年03月14日(木)