■真摯にコミュニケーションをとることでスタッフのモチベーションが向上
ドラスティックな運営スタイルの変化が生じたホテルの現場では、スタッフのマインドも揺れがちと想像される。今回の円滑なテイクオーバーには髙間氏がコミュニケーションのハブとなって果たした役割が非常に大きかったようだ。
「当時のスタッフには、それぞれの人生設計を尊重しつつ一緒に頑張っていこうという話をしました。しかし、会社が変わるというのは誰しもが経験のなかったことだったので、最初はどんな風になるんだろう、どんな人が来て何を言われるのだろうかと不安もあったでしょう。
会社が変わってからは最初、いままでとはちがうということを皆に植え付けるところから始めました。社員も仕事の効率化を求められましたので、私のような立場にいる人間ができるだけいろいろな人に声を掛けるようにしました。そして口コミの良し悪しや価格設定などの話を含めて、コミュニケーションを取り続けました。最初の一年は、本当に変化についていくのに精一杯でしたね」。
髙間氏の丁寧なケアで、スタッフの意識も少しずつ変わっていったという。
「例えば収益について、以前は各ホテルのトップだけが分かっていれば良いという感じでしたが、いまはスタッフやパートさんにもホテルの目指すところを伝えることでホテル全体の意識が変わってきました。料金に見合うよう料理やサービスの質も追いついていかなければならない。そう皆で話しましたし、それまでとはちがうことを見せようという気持ちもありました。いまでは、こういうことをやりたいという積極的な声も聞かれるようになりましたね。
新入社員や、統括している施設の中には外国人の技能実習生が入ってくるなど新しい風も吹いています。職場の雰囲気も変わりますし、お互いにいろいろな経験もできて良い感じで回っていますね。
何より、お客さまから雰囲気が良くなった、ありがとうと言っていただけることがとても励みになっています」。
新たな運営手法の導入やスタッフの意識の変化によるサービス向上で、業績は好調に推移。「亀の井ホテル奈良」では客室稼働率が格段に上がり、ADRも以前よりも上がり1万9000円を記録するまでに改善されていったそうだ。
これからはさらにオリジナリティを打ち出して高みを目指す。
「亀の井ホテルの名に恥じないようなおもてなしを提供していきたいと思っています。ホテルマンとしてきっちり接客し、料理もありきたりな和食会席ではなく、このホテルならではの個性を加えていく考えです。サービス提供時に少し深い知識のお話をしたり、親しみやすくお客さまの輪に入り込むような接客が良いのではないかと思っています。お客さまが見られる料理写真も漠然と写すのではなく、マイステイズグループのプレゼンテーションを見習って工夫する。昔の価値観から脱却して、マイステイズグループの他の施設と同じ土俵に立って同じ会話ができるようになることを心しています」。
また、自身としては若手が目指したいと思ってもらえる総支配人の人物像を見せていきたいと語った。
特別企画 マイステイズ・ホテル・マネジメント
テイクオーバーで実感したマイステイズの実力、業績もアップしてスタッフの意識にも変化
【月刊HOTERES 2023年12月号】
2023年12月18日(月)