平日限定点心ランチが素晴らしい。
天才点心師による点心と評茶員が選ぶ中国茶
今年で28年目を迎えるザ・リッツ・カールトン大阪。昨年2024年10月に新たにリニューアルされ、「継承と新生」をコンセプトに客室が生まれ変わり、ヨーロピアンクラシックの伝統と優美な世界観はそのままに、新たなエッセンスが加えられ「フォーブス・トラベルガイド」5つ星の老舗ホテルとしてさらに存在感を増している。館内にはミシュランスターを有するフランス料理「ラ・ベ」、日本料理「花筐」を含む6つのレストラン&バーがあるが、今回ご紹介するのは、独創的な広東料理を展開する中国料理「香桃(シャンタオ)」。料理長皆上敬司さんがクリエイトする王道の広東料理にモダンなエッセンスをふりかけた中国料理が評判だ。
中庭に面したレストラン内は、中国製陶器など華麗な美術品が飾られたラグジュアリーな空間。大阪在住の人々にとって、ハレの日に行きたい人気レストランでもある。私も毎年お正月には家族で訪れていた大好きな場所。こちらの平日限定の点心ランチ、7,900円がめちゃくちゃおすすめだ。
「香桃(シャンタオ)」店内
正直言って、日本で本当に美味しいと思える点心に出逢える確率は激しく低い・・。新しく香港からやってきた!という飲茶専門店やヨーロッパ発の話題のレストランにも行ったが、何かが本場とは確実に違うのだ。それが、こちらの点心料理長 王 勝君さんが作り上げる飲茶は、香港の高級中華でいただく点心みたいに繊細で美味しくて感動した。いや、わたくし自慢ではないですが(笑)かつては最高の点心を求めて1年に何度も香港を訪れていた。当時、私たち食いしん坊仲間たちにとって、香港のグルメ旅はもはや社会問題に等しいほど、中国料理に命かけていた、そんな時代。そんな中で、点心の頂点は中国料理で世界初のミシュラン3ツ星を獲得したフォーシーズンズホテル香港の広東料理「Lung King Heen龍景軒」。こちらの飲茶を楽しむために香港に通った人、数知れず。「香桃」の点心師、王さんが作り上げる点心はそんな香港で食べた最高峰の味を思い起こさせてくれる。王さんは、上海の西に位置する江蘇省出身で北海道の名門ホテルでも腕を磨いてきた逸材だが、彼の点心は、優しくてとっても深い味だ。
点心料理長 王 勝君さん
点心の内容は季節によって変わるが、この日いただいた蒸し点心は海老蒸し餃子、トリュフを練り込んだもの。鮑がのった焼売。揚げ焼き点心は、大根餅、揚げ春巻き…など、ひとつひとつが芸術品のように丹精でしみじみ美味しい。もちろん点心以外も、海鮮を包んだ吞入りサンラータンなど絶品だった。メインは、鯛か姿鮑のオイスターソース煮込み(追加料金)を選ぶが私は鮑をチョイス。鮑のエキスがじわじわと口の中に広がった。〆は豚肉入り中華粥でこちらもこよなく優しい味。デザートは、小豆と白玉団子のお汁粉陳皮の香りとイチゴの月餅。これで7900円(税サ込)。ラグジュアリーホテルのレストランの値段にしてはとてもリーズナブルだと思う。
点心料理
今回は特別に珍しい中国茶と台湾茶をペアリングして頂いた。これが他ではまず出逢えない「香桃」ならではの唯一無二のお茶。ソムリエでもある高級茶藝師・小田純也さんが選び抜き、抽出した台湾烏龍茶の水出しなど、まるでブランデーのような美しい琥珀色で馥郁とした香り。うっとりするほどピュアで澄んだ味わいだ。そんな一級品のお茶をリーデルのグラスで提供してくれるのもうれしい限り。小田さんは、台湾各地から中国大陸奥地に至るまで100回以上も名だたるお茶の産地を訪れ、多種多様な茶葉と出逢い、収穫、加工、茶藝について学んできた。高級茶藝師であり高級評茶員の資格も持っている。こちらに来たらぜひ中国茶とのマリアージュを楽しみたい。
高級茶藝師・小田純也さん