10月4日(水)、ウェスティンホテル東京にて第15回「キリ クリームチーズコンクール」の最終審査と表彰式が、ベル ジャポン(株)と(株)アルカンとの共催で行われた。
以下、結果を含め当日の様子をレポートする。
4年ぶりの開催となった本大会では、新たに設立された「デリカテッセン部門」を加え、「生菓子部門」、「ファクトリー部門」の3部門が設けられており、162の応募作品は8月初旬に一次審査が行われ、審査の末に選ばれた計15作品が最終審査に進み、各部門における最優秀賞、銀賞、銅賞が決定した。
【各部門、それぞれの視点で厳選される】
「キリ クリームチーズコンクール」は、2000年からこれまでに延べ4,106名、4,561作品のエントリーを誇る大会だ。過去には「キリ クリームチーズ」を使った受賞作品がコラボ商品として販売されており、「キリ クリームチーズ」は今年で日本発売 40 周年を迎える。
4年ぶりの開催となった本大会では、新たに設立された「デリカテッセン部門」を加え、「生菓子部門」、「ファクトリー部門」の3部門が設けられており、10月4日(水)に一次審査を通過した計15作品が一同に会し、各部門における最優秀賞、銀賞、銅賞が決定した。
「デリカテッセン部門」最優秀賞を飾った平山英司氏
「デリカテッセン部門」では、名鉄協商(株)の平山英司氏の「カプレーゼ風キッシュ」が最優秀賞を受賞した。受賞に際し平山氏は各所に感謝を述べた後、フランスのベーカリー&カフェ「ゴントラン シェリエ」を運営する自社について少し触れた。受賞の場であっても、認知向上に努める平山氏の姿が印象的であった。
平山氏の作品「カプレーゼ風キッシュ」
「デリカテッセン部門」の総評をしたKOTARO Hasegawa DOWNTOWN CUISINEの長谷川幸太郎シェフは「経営者としての視点」について触れ、美味しいものを提供するだけでなく、付加価値をどのように付けて利益を生み出していくかという点も重要であることを指摘していた。様々な原価が高騰する今日、また給与アップにつながる利益を確保するためにも経営者目線を持つことは大切であり、会場でも頷く来場者の姿もあった。
「ファクトリー部門」最優秀賞を飾った川原大治氏
続く「ファクトリー部門」では、(株)北のアトリエの川原大治氏の作品「モォモォバターサンド fromage milk」が最優秀賞を受賞した。見た目にも目を引く作品であり、名前から受ける印象ともマッチしていた。「ファクトリー部門」はその名が示す通り、季節に限定されず、「キリ クリームチーズ」の使用量が総重量の20%以上であり、工場生産ラインで生産可能であるという条件のもと審査された。
川原氏の作品「モォモォバターサンド fromage milk」
「ファクトリー部門」の総評をしたà tes souhaits! (アテスウェイ)の川村英樹シェフは、「ファクトリー部門」は自分のような一つ一つを手作りするものとは対極にあるとしながら、参加者のプレゼンテーション技法が優れていた点に言及しつつ「シンプルさ」について触れていた。数を作る場合、原材料が複雑になると材料コストも時間も掛かってしまう点を指摘し、美味しいものをシンプルに作ることの重要性について話をした。
「生菓子部門」最優秀賞を飾った山下莉奈氏
最後の「生菓子部門」では、パティスリー アテスウェイの山下莉奈氏の作品「éclat」が最優秀賞を受賞した。「生菓子部門」は当日に実技があり、結果も非常に接戦だった模様。
山下氏の作品「éclat」
総評をしたアステリスクの和泉光一シェフも書類審査と実技審査の違いに触れ、勝ち抜くための練習量と想いが結果に反映されていた旨を説明した。
【学生が選ぶ作品】
本大会では、上記の3部門に対し、就学中の調理・製菓専門学校生7名の審査により「Z世代が選ぶベストスイーツ賞/ベストデリ賞」が発表され、各部門1作品ずつ選ばれた。「生菓子部門」では、(株)コスミックス ソンブルイユの岩佐祐佑氏の「EXOTIQUE SOLEIL」が、「ファクトリー部門」では、コスモフーズ(株)の上田夏望氏の「ヴェルヴェット リッチチーズテリーヌ」が、「デリカテッセン部門」では、名鉄協商(株)の平山英司氏の「カプレーゼ風キッシュ」がそれぞれ選ばれた。
【市場拡大の担い手】
本大会で印象的だったのが、大会を通じて様々なことが学べるということだ。「生菓子部門」と「ファクトリー部門」はある意味手作りとライン生産という対極にありながら、どちらも根底には「キリ クリームチーズ」をどのように活かすか、延いては、チーズの可能性や市場性をどのように伸ばしていくかということが感じられる。新設された「デリカテッセン部門」は、まさにそうした汎用性の延長上にあるものと言える。
審査員の方々が言及された経済性や収益性、顧客の視点に立った作品作りやWTP (willingness to pay, 支払意思額)を向上させるための付加価値化も重要だ。そうした視点を知れば、例えばフランスにおける農業政策や、気候による原価への影響という、流通の上流への視点も生まれてくる。「キリ クリームチーズコンクール」は、流通全体や市場拡大という個人の仕事を超えた大局的な視点で見たり考えたりするきっかけを与えてくれているように感じた。国内外で活躍するトップシェフを輩出する大会だけでなく、未来の市場を担う人材の育成の場としても魅力的に映った大会であった。
担当:小川