ワイン輸入業者において、成功する買い付けとは何か、どうすればよいのかを、マスター・オブ・ワインのJennifer Docherty氏が自身の経験を踏まえ講演を行った。
Jennifer Docherty MWは元々UKでバイヤーの仕事をしており、今は香港、中国、マカオといった市場向けにもワインの販売を行っている。講演は輸入業者向けでありながら、問屋や小売バイヤー、消費者自身もバイヤーであり、その流通(生産から消費まで)においてバイヤーが果たすべき役割と注意すべき点が話され、会場からは多くの質問が飛び交った。
当たり前の事だが、よく忘れられることとして「Buying is Selling」という表現をしていた。筆者自身も過去何度か著名なMWとお話させて頂く機会があったが、皆一様にして「市場を創れること」がMWの資質として求められることを教えてくれた。
では、市場をどのように創って行けばよいのか。輸入業者のバイヤーという視点からJennifer Docherty MWはその購買から販売のプロセスを細かく説明。また、自身で活動するだけでなく、実際に販売に携わる「営業」との信頼関係や、コミュニケーション能力、企業として継続していくための会計視点(入金・支払いのサイト)、法やコンプライアンス、税金など多岐に渡る内容でそのポイントを惜しみなく伝えていた。
筆者自身も買い付けに行った際の経験を思い出しながら講演を聞いた。どんなに良いワインでも自社で売ることが出来なければ、それは良い買い付けとは言えない。そして、実際に購買をしてくれる相手へのリスペクトを忘れてはいけない。精神論的な感じもするが、そうしたことが欠けると、生産者も消費者も流通業者もいい思いをしなくなってしまう。
以前、良いワインの背景には良いバイヤーの存在があることをコラムで書いたが、そうしたバイヤーがどれだけ細かな仕事を行っているのか、知識だけでなく総合的なスキルが求められることを改めて教えてくれる内容であった。
唯一残念に感じたのは、日本のバイヤーと思われる姿が少なかったことだ。基本的なことでも学ぼうとする姿勢を、改めてアジアのバイヤーから学ばせてもらった気がする。こうした講演に、バイヤー業を目指す、もしくは現在取り組んでいる方々にも参加して欲しいと感じた。
担当:小川