「庭園にたたずむ古都のオーベルジュ」
----こちらのコンセプトには、どのような想いが込められていますか。
興福寺という古都奈良の文化財の袂に佇むこの場所で、自然と歴史に触れあいながら滞在を楽しんでいただきたいという想いがあります。ホテルの周辺を歩くと分かるのですが、奈良公園や興福寺など、緑と文化財の宝庫のような土地なのです。登大路ならではの閑さや奥ゆかしさの中で、ゆったりとした時間をお過ごしいただきたいですね。以前は鳳凰をモチーフにしたロゴを使用していたのですが、リニューアルのタイミングで庭園に立つ一本の木をモチーフにしたロゴに変えました。このロゴは人が集って同じ時を過ごしているようにも見えて、当ホテルもそのような存在にしていきたいと思っています。
----この素敵なコンセプトを支えている要素には、なにがありますか。
「食」と「音楽」と「おもてなし」です。
「食」に関しては、北海道札幌のレストラン「モリエール」監修のダイニングで、北海道の大地や沿岸で育った食材を使用したフレンチを提供しています。とにかく「あつあつ」の状態で提供することに拘っていて、お客さまの口に入るその瞬間までこだわり抜いています。今後は、奈良の食材とのマリアージュもお楽しみいただけます。
「音楽」は、静けさの中でこそ活かされるものだと考えています。レストラン「ル・ボワ」にはスタインウェイのピアノが、バーにはスコットランド「LYNN」のスピーカーがそれぞれ設置されています。お食事やご歓談に寄り添ったまろやかな音色を出してくれます。
また、こだわりの場所として、地下1階のサロンがあります。今はもう手に入らない貴重なターンテーブルを設備しており、上質な音楽を実家のような温かみのある空間でお楽しみいただけます。
現在はプロのピアニストや、「JAPAN NATIONAL ORCHESTRA」からソリストをお呼びし、演奏していただいています。ここを若手音楽家の活躍の場とし、音楽ファンの皆様にご宿泊いただけると嬉しいですね。
「おもてなし」に関しては、13室という小規模のホテルなのでお客さま一人ひとりに向き合うことができるというのが私たちの強みですね。私はおもてなしをしているというよりも、「自分が愛してしまったものを人に話すこと」を突き詰めていった結果がおもてなしに繋がっていると考えています。当ホテルの制服には名札が付いていないのですが、お客さまとお話しているなかで「失礼ですがお名前をお伺いしてもよろしいですか? お名前でお呼びしたいです」とお客さまからおっしゃっていただいた時には心の中でガッツポーズしていますね(笑)。