毎週、お酒に関わらず飲料を様々な視点で紹介したり考えてみるコラム「Drink of the Week」。
第4回は、ポップな絵柄と果汁入りで飲みやすい白酒、江小白の「果立方」です。
江小白 果立方【白葡萄】
白酒に白葡萄の果汁が入ったもの。白葡萄の香りが華やかで、甘くジューシーな味わい。後味に白酒らしい香りが広がる。そのままよりは、ソーダなどで割るとよりカジュアルに楽しめそうだ。
製造元:中国・重慶江記酒庄有限公司
輸入元:日和商事株式会社
ラベルや味からみるコミュニケーション
今発売されている、マクドナルドの「アジアのジューシー」。CMが色々と話題になっていますが、パッケージ(包み紙)が印象的ですよね。見た瞬間、「あ、カワイイ。買おうかな?」と思いました。今、デジタルでも広告に触れない日はないくらい様々な広告コミュニケーションがとられています。今回ご紹介した白酒も、どういったターゲットにどのようなコミュニケーションを取っているのかがすごく見やすい商品だと思います。
生産者のwebページを見ると、商品の画像と共に、レトロゲームをプレイしながら果立方【白葡萄】を飲んでいるイメージが添えられています。ポテトチップスもあり、どのようなシーンでどのような年齢に訴求しているのかが分かりやすくイメージとして描かれています。
味わいも、白葡萄の果汁が入っており、華やかなマスカット様の香りとジューシーで甘さのある味わいが白酒のイメージを覆してくれます。余韻にほんのりと顔を見せる白酒らしさが何ともいえません。フレーバーについては何年も前からトレンドの一つして挙げられていますが、最近IWSRのニュース&コメントでもフレーバーについての記事があり、遊び心や新しい体験がカギとの事でした。
レトロゲームのようなノスタルジーな雰囲気は、若い世代の方にとっては体験したことが無く新鮮なのかも知れません。ラベルの素材も持続可能性が求められるようになっていますが、ラベルからどのようなコミュニケーションを取りたいのかを考えるのも面白いと思います。消費者が見た印象をAIで定量化するサービスものあり、この分野は今後より洗練されていきそうな気もします。
そうして考えると、ご当地コラボやキャラクターコラボのお酒はターゲットが分かりやすいのですが、味自体は通常品と変わらないものが多いのではないでしょうか。では、味によるコミュニケーションとはどういうものなのでしょうか?例えば、試飲をしている時はどうでしょうか?誰と何についてコミュニケーションしているのでしょうか?私も果立方【白葡萄】の味がターゲットとマッチしていると感じましたが、それは何故なのか。
裏を返すと「お酒を通じて自分がどう認識をしているのか?」という事にもなるかと知れません。abyss gazes also into youではないですが、試飲をする時ついつい評論家の様にコメントしがちで気を付けないといけないと感じます。ティピシティ―がある味わい、自然派生産者が造る個性的な味わい、技術の粋で造られた格調高い味わい。そこには、自分と世界との対話が常に開かれているのかも知れません。
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【今週のカバー】五箇山, 日本
この写真を撮るのに1時間ちょっと外にいたのですが、本当に音がしなかったのを覚えています。深山幽谷にひっそりと佇む村。養蚕や紙漉きだけでなく、塩硝や流刑地といった歴史的な面が意外で雪景色よりも印象的でした。
【参考文献】
IWSR, Spirits flavour innovation in 2023 focuses on playfulness and new experiences
Nicola Perullo, Epistenology Wine as Experience, Columbia University Press, 2020
担当:小川