毎週、お酒に関わらず飲料を様々な視点で紹介したり考えてみるコラム「Drink of the Week」。
第3回は、今後の活躍が楽しみなバローロ生産者Az.agr.TESです。
ネック部分のみにシールがあり、ラベルはない。これも味わい直球勝負の表れでしょうか
TRE LANGHE NEBBIOLO 2021
【品種】ネッビオーロ。敢えてロエロ地区のネッビオーロを加え、可憐で華やかな芳香と豊かな果実味を実現。
【醸造】天然酵母。最初の24時間は1〜1.5時間おきに櫂棒で醸し。1日2回ほど手作業で果汁のみを掻き回し酵母が活動しやすい一定した温度を保つ。澱引きは2回で瓶詰め。 収穫から瓶詰めまで全て手作業。
【輸入元】Vinopecora 有限会社 山本酒店(三鷹)
直地販売的ワイン
ワインの買い付けに行くと、知らない生産者さんと試飲商談をします。バイイングの楽しさは、そうした知らない生産者さんの造ったワインを試飲して、表現したかった事や工夫したであろう点を自分なりに伝えて盛り上がったりすることです。トレジャーハンター的な掘り出しを見つける楽しさがあります。だからこそ、別の方が買い付けしたワインに感動した時は「いい仕事してるなぁ」と思う反面、悔しくもなります。
今回ご紹介のワインはまさしくそんなワイン。造り手は、東京ご出身でピエモンテで活動をされています。クラフトというのがぴったりな印象のワインです。クラフトというとどうしても醸造のイメージが強くなりますが、畑からブドウ一粒一粒を農家としてつくっていると思わせてくれるような丁寧さがあります。
農家さんの顔が見えるお野菜とか販売されていますが、ワインの場合、醸造家の顔が見えるというのが大抵の場合当てはまるのではないでしょうか?一方で、顔の見える農家さんが造るワインというのも、日本ワインを含めても市場には少ないと思います。そうした生産者さんは生産量も少なく、市場に出回る数も少ない上に、流通の問題があるからです。ブルゴーニュも希少なものは手に入れられないのが実情ではないでしょうか。
流通で言えば、ボルゴーニョがLa Place de Bordeaux経由で販売されることもニュースになりました。ワイン流通の話は実務上殆ど出てきませんが、La Placeの在り方や透明性については10年ほど前にも指摘や議論がされていました。どの流通に乗せるか、つまり、どの輸入業者とお付き合いをするかというのも生産者にとってはその後の販売やプロモーションに大きく影響してきます。
ワインの市場という観点では、ボリュームの大きい取引も必要ですが、1本1本手売りするようなワインも重要です。そうしたワインを見つけることが出来る背景には、優れたバイヤーの存在があります。生産者会うことを希望される方は多いと思いますが、バイヤーの感性を知るというのも違った面白さがあると思います。試飲会などに参加された際には、そんなことも考えてみると良いかも知れません。
また、ブランドと同じく、生産者や輸入業者で選ばれる方もいるかと思います。もしよくわからない生産者や輸入業者を見たときは、純粋に売っている方に聞いてみるとよいと思います。そこには、思わぬ出会いがあるかも知れません。
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【今週のカバー】Sirmione, Italy
ロミオとジュリエットの舞台ヴェローナから少し東、ガルダ湖南岸にある半島の街「シルミオーネ」。実はヴェネトとかと思いきやロンバルディア州だそうです。湖畔に沈みゆく夕日と共に飲んだネグローニが最高でした。
担当:小川