レミー コアントロー ジャパン株式会社が展開する「レミーマルタン」が開催するRÉMY MARTIN BARTENDER TALENT COMPETITION JAPAN 2022の日本大会ファイナルが、12月14日(水)アンダーズ東京 ルーフトップスタジオにて行なわれ、ザ・リッツ・カールトン京都「The Bar」の竹下 健一 氏が優勝した。
ファイナルは2部門あり、予選を勝ち抜いたオンラインエントリー作品をプレゼンテーションしながら制作する実技審査(オリジナル・サイドカーチャレンジ)および、オーダーされたカクテルを制作して提供する一連の流れを英語にてロールプレイする接遇審査(コニャック・チャレンジ)を通じてバーテンダーの総合力を競い合いあった。
大会で感じた下記3点を結果と併せてお伝えしたい。
クラシック、ツイスト、タレント
古典はいかにして古典となるのか。古典たらしめるものは何か。小林秀雄が評論の可能性を語ったように、クラシックカクテルをツイストをするには深く作品を読み解かなくてはならない。その切り口がタレントであり、オリジナリティにもなりえる。要素に着目するのか、スタイルに着目するのか、はたまたストーリーに着目するのか、視点は様々である。完成された様式美をアレンジするということは、自身の哲学や感性を作品に反映することでもある。今回のファイナル大会では、様々なタレントが見られた。
西原 直輝 氏(東京エディション虎ノ門「GOLDBAR at Edition」/東京都)は宝塚歌劇団が好きで、小説家になるために様々な経験を積みたいという自己紹介から入った。サイドカーという完成されているカクテルへ敬意を表し、ベースとなるレミーマルタン1738の滑らかさと華やかさを引き立たせるために、フランスの要素と日本の要素を加えて「記念日に貰う花束」のようなカクテルを披露した。オリジナルの様式美を尊重しつつ、フランスと日本という両国の要素を調和させながら愛をテーマにしたカクテルへと昇華させた。
加藤 晋悟 氏(The Sailing Bar/奈良県)は、ブランド、スピリッツのストーリー、サイドカーの3つに共通する「相棒」というキーワードを見出し、レミーマルタンが掲げる「人と自然との調和」を踏まえ創作。オリジナルの材料としてシャンパンシロップ、パイナップルのハスクを利用したシュラブを用い、冷蔵庫のなかった時代に思いをはせ、廃棄される素材をうまく活用したSDGsの観点からも評価の高いカクテルを披露した。
ファイナル進出の8名すべて、各々の個性が感じられる創作がなされていた。カクテルの世界で味が評価されることは当然だが、こうしたパースペクティブが日頃提供の際に語られ評価されることは少ない。守破離ではないが、ツイストを行うという前には、その酒類の歴史と向き合わなくてはならない。コニャックのブランドひとつとっても歴史やスタイルが異なる。コンペティションには、こうした学びの場としての機能がある。積極的に参加することで、酒類全体の深い知識を学べるため、若手にも多くチャレンジして頂きたい。
プレゼンテーションとデモンストレーション
どちらも似た言葉であるが、プレゼンテーションは贈呈を示す語源から表現という形へ意味が変化してきたのに対し、デモンストレーションは実証を示す語源から派生している。そこにはモンスターの語源となる驚きといった要素も含まれ、社会的な意思を示すデモ行進のデモンストレーションから、実演や演技といった意味のデモンストレーションもある。コンペティションでは、そつなくプレゼンテーションを行うだけでなく、タレントを顕示する意味でデモンストレーションが必要になる。
竹下 健一 氏(ザ・リッツ・カールトン京都「The Bar」/京都府)はデモンストレーションが秀でていた。オリジナルサイドカーチャレンジでは、「先駆者」というテーマで創作をおこなった。審査員にカクテル免許書をひとりづつ手渡ししたあと、エンジンを吹かす効果音と共にライダースジャケットを羽織り、カクテルメイキングをサイドカーでのツーリングになぞらえてショーを演出した。カクテルも随所にそのエスプリが感じられ、ポートシャーロットでタイヤのスモーキーさを表現し、土壌に見立てたダークチョコレートをコースターに用いた。
パフォーマンス中の竹下 健一 氏
また、優勝者は世界大会に出場することから、コニャックチャレンジでは英語による即興の対応も評価された。英語の得手不得手よりもコミュニケーションを取ろうとする姿勢が重要視されていた。今後、日本の観光産業によるインバウンド獲得に向けた動きが活発になる一方、様々な国からの旅行者を迎える機会も多くなることが予想される。practice makes perfect、備えあれば憂いなし。日頃からそうした心構えをすることで、未来が大きく変わるかもしれない。ビジネスチャンスをつかむためにも、練習する場を設けることは必要となる。
楽しむ力と市場性
今回の勝敗を分けた点のひとつに、楽しむ力があると感じた。困難や挑戦を楽しむ力というのは、その環境をどう捉えるかということに繋がる。例えば、忙しいタイミングにイライラする場面でも、面白くなってきたとポジティブにとらえプラスに考えることができれば、対応や仕事も変わってくる。バーは、さながら舞台の様な環境と見ることができる。バーテンダーがエンターテイナーとしての側面を備えているかが、コンペティションで重要になる。自分のナラティブ(世界観)を、カウンターを隔てた観客に楽しんでもらうには自分自身が楽しむ必要がある。クリエイティブな世界観を表現できるかは、その人のタレント性の評価に繋がる。
そして、もう一つ押さえておきたい点が、市場性である。コンペティションは競う場ではあるが、メーカーがその場を提供する意味は何だろうかと考えることが重要だ。単純に認知やブランディング、コネクションや才能の発掘といった面だけでなく、出場者は「どのようにして販売を伸ばしていくか」という問いを暗に示されている。カクテルを通じた消費だけでなく、そのブランドやひいては酒類のカテゴリーをどのようにして伸ばしていくのかという問いかけに繋がっている。そこには、流通の視点が欠かせない。ファイナルに進出できた出場者は企業と密に接することで、流通を学ぶ機会を手にしている。大会終了が終わりではなく、そこからさらに自分を高める機会へと繋げられるか。そこにこそ、大会参加の大きな意義があるのではないだろうか。
優勝者した竹下氏は、 2023年6月フランス・コニャックで開催予定の「RÉMY MARTIN Bartender Talent Academy(レミーマルタン バーテンダー タレント アカデミー)」世界大会決勝への出場に加え、2023-2024年 RÉMY MARTIN関連のイベントやカクテルの魅力、文化を伝える活動が控えている。これを機に、大きく成長するであろう竹下氏の今後に注目したい。
尚、レミーマルタンは2022 年 12 月 12 日(月)~29 日(木)まで渋谷でイベントを開催している。大会で使用された、レミーマルタン1738アコード・ロワイヤルも提供されている。これを機に、一度コニャックの歴史や文化、伝統に触れてみてはいかがだろう。
名称 :RÉMY MARTIN POP UP BAR(レミーマルタン ポップ アップ バー)
期間 :2022年12月12日(月)~29日(木)
場所 :渋谷ストリーム1階 カクウチ・ベース POP UP SHIBUYA店内
営業時間は下記の通り
【平日】12:00-23:00 (FOOD L.O. 22:00, DRINK L.O. 22:30)
【土曜日】14:00-23:00 (FOOD L.O. 22:00, DRINK L.O. 22:30)
【日祝】14:00-22:00 (FOOD L.O. 21:00, DRINK L.O. 21:30)
RÉMY MARTIN BARTENDER TALENT COMPETITION JAPAN 2022
総合優勝
竹下 健一 氏(ザ・リッツ・カールトン京都「The Bar」/京都府)
部門優勝
オリジナルサイドカーチャレンジ 加藤 晋悟 氏(The Sailing Bar/奈良県)
コニャックチャレンジ 竹下 健一 氏(ザ・リッツ・カールトン京都「The Bar」/京都府)
写真左:加藤 晋悟 氏, 写真右:竹下 健一 氏
出場バーテンダー8名(エントリー番号順)
藤倉 正法 氏(Bar×Bar×Bar WATARASE/栃木県)
古瀬 則彦 氏(Zentis Osaka「UPSTAIRZ」/大阪府)
西原 直輝 氏(東京エディション虎ノ門「GOLDBAR at Edition」/東京都)
生田 理実 氏(BAR SLOPPY JOE/兵庫県)
加藤 晋悟 氏(The Sailing Bar/奈良県)
竹下 健一 氏(ザ・リッツ・カールトン京都「The Bar」/京都府)
三枝 拓矢 氏(TWO ROOMS GRILL | BAR AOYAMA/東京都)
木野内 捺 氏(QUAYS pacific grill/神奈川県)
担当:小川