----アクアイグニスは、とてもハイセンスなものを感じますが、当初は芸術家を目指していたことと関係しているのでしょうか
もともとデザインが好きだったことと建設会社に勤めていたことが影響を与えていると思います。10年くらい前はカッコよくてさっぱりとした温泉宿があまりなく、美味しい料理を食べて素敵な旅行を過ごしてほしいという思いから建てました。またカッコいいデザインの建物を建てていただいたためS N Sなどに掲載されることが多く、広告費をあまり使わずに広めていただけたということも良かったところであると思います。
鈴鹿山脈の名峰「御在所岳」のふもと、三滝川沿いの木立のなかにたたずむヴィラ
----コラボ相手の選び方は
スイーツってすごいなと思ったことがあるんですけど、田舎で何もないところにスイーツ屋さんが一つできたことですごい行列ができていたんです。そこで愛知県のスイーツ屋を何軒か当たったんですけれど全く相手にされず、やるなら日本一、世界一だということで辻口さんのところに行きました。(アクアイグニスにある)いちごハウスでは温泉熱を利用した美味しいイチゴができていたので、辻口さんのところへ行き、やっと7回目くらいにきちんとお話ができたんです。
そこからのスタートで、辻口さんもすごく人間味のある方で、現地を見にきてくださることになりました。我々と一緒に思い切ったことをしませんかと持ちかけたところ、辻口さんもタイミングが良かったこともあり、今回は監修ではなく移転までしてきてくださいました。こういう本気で来ていただいたということもあったからこそ、辻口さんの関係で奥田さんなど様々なことに繋がっていったのだと思います。
----不動産業・宿泊業に事業を拡大しようと思ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか
菰野町の隣に工場を構えていたホンダという会社から建設のお仕事をいただいていた時に、社員寮をやってくれないかと頼まれました。それがきっかけでビジネスホテルを買い取って改修し、即日営業できるようにお宿のようなことを始めました。その2年後ホンダさんが社員寮が必要無くなったからと、契約期間の残り年数分の家賃を全て支払ってくださった上で社員寮を終えたんです。このような経緯でそのままそこでビジネスホテルを経営するご縁があり、やはりもっと大きな事業や素敵なお宿をやっていきたいと思うようになりました。そのためには資金が必要で、このような事業を続けてノウハウもため、片岡温泉を購入させていただいたときは、何かこう生まれ変わらすきっかけにしようという思いがあったため、それを形にできたのが大事だったのかなと思っています。
12あるヴィラのひとつ「囲土(いのつち)」。ヴィラはすべて100㎡ほどの広さ。ひとつとして同じ間取り、同じ設えはない
----行動力につながる原動力などはありますか
とにかく学生の頃、若い頃から事業で経営することが好きで、それもかっこいいこととか素敵なことだとか喜んでもらえる事業をしたいという思いがすごくありました。しかしそれをするためにはやはり資金が必要で、建設業も結果としてやりたいことを実現するためには大事な時期でもあったし、デザインも大事ですし。今の観光業といいますか宿泊業というのはこういったデザインやレストランなどがわかってもらえやすいところで、これまで作ることに苦労してきましたが、やっとこれからお客さんに喜んでもらったりだとか、社員の人にも還元していこうだとかそういうことをやっていきたいなという。人生一回なので、そういう意味ではこの思いを目指していきたいなと思っています。
「囲土」の内観。左官職人のつくる土壁がテーマ。曲線を描く土壁と、アフリカの木製家具やプリミティブアートが、どことなくサンタフェスタイルを想起させる