『素のままの美しさを体感できる宿』
宿泊産業の競争が激化し、ゲストのニーズが多様化しているいま、ホテルのマーケティングに求められている戦略は、とんがりをつくることである。とんがりで差別化し、そのとんがりに関心のあるゲストが集まる。本連載では、そんなコンセプトが際立ったホテルや宿泊施設を厳選して紹介し、それを支える秘訣を紐解いていく。担当するのは、立教大学観光学部で宿泊ビジネスを学ぶ学生たち。学生のピュアな心に、日本のホテルはどう映り、どう表現されるのか。
取材・執筆/ 立教大学観光学部3年 犬塚理亜、菅野美月 監修/宿屋大学 代表 近藤寛和
2020年7月に開業した三重県菰野町に位置するヴィラ、『湯の山 素粋居』。陶芸家・造形作家である内田鋼一さんのプロデュースによる全12棟のヴィラは一部屋ごとに石や和紙といった異なる素材をテーマに用いており、まるで泊まることのできる美術館のような宿である。菰野町の素材と自然を活かした全部屋で、掛け流しの露天風呂も楽しむことができる。立花哲也社長ご自身と、素粋居についての二つのテーマに沿ってお話を伺った。
素粋居のレセプション棟
立花社長ご自身について
----これまでの経歴を拝見しましたが、いくつもの素晴らしい事業を展開している成功のポイントとはどのようなものなのでしょうか。
もともとデザインが好きで芸大に入りたかったのですが難しく、建設会社のアルバイトを始めました。そのうち現場監督などの経験を通して、漠然と様々な事業を経営側でしたいという思いが芽生えました。そこでまずは建設業を始めようと20歳で建設会社を立ち上げ、1人で始めたものが2人になり、3人になりと、どんどん大きくなっていったんです。どんどんオープンに競争していこうとしていたところ、10年くらいしたら年収15億ほどのような建設会社になりまして。あわせて不動産や開発を進めているなかで、アクアイグニスの元となる片岡温泉という温泉宿が後継を探しているという話を聞き、購入いたしました。その後運営していたところ、高速道路の建設に当たってしまい、10億円ほどで買い取っていただくことになりました。そこからアクアイグニスを始めて10年になるのですが、ありがたいことにアクアイグニスの離れのお宿が好調だったことと、陶芸家の内田鋼一さんとの出会いがきっかけで素粋居を作り、昨年は「VISON」という食をテーマにした日本最大規模の商業施設に関するリゾートを作った、というのが現在の私の状況でございます。
(株)アクアイグニスの立花哲也代表取締役