森トラスト㈱ではこのほど「令和3年 都道府県地価」について、代表取締役社長 伊達美和子氏の見解を発表した。
■商業地の全体感
商業地の地価は、全国平均で2 年連続の下落となったものの、三大都市圏のうち、東京圏では 9 年連続で上昇を継続した。大阪圏では9 年ぶりに下落に転じた一方で、名古屋圏では下落から上昇に転じた。地方圏の平均においても 2 年連続の下落となったものの、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)においては上昇を継続し、4.6%の上昇となった。
■背景と具体的な現象
コロナ禍以降、オフィス需要は弱含みであるものの、低金利・金余りの状況が続いているため、 不動産に対する投資需要は引き続き堅調である。大規模開発が進む虎ノ門・赤坂エリアでは、将来的な期待感が下支えとなり、当該エリアの地価は横ばいを維持している。 地方圏の地価平均は、コロナ禍による観光業への打撃に伴い下落したが、再開発の進むエリアや、コロナ収束後に観光需要の回復が見込まれる観光地においては地価の上昇がみられ、全国的に二極化の様相を呈している。別荘利用・教育施設の充実を背景として移住者が増加している長 野県軽井沢町や、投資需要が堅調に推移した長野県白馬村や沖縄県宮古島などにおいては、地価が上昇した。
■今後の見通し
テレワークの普及に伴い、オフィスの役割を再定義する企業の動きが活発化している。その中 で、オフィスはワーカー同士の交流や知を創出し、企業の成長につながるといった認識が改めて広がりつつある。直近ではオフィス空室率の上昇が目立つものの、今後の働き方を見通せる状況になれば、生産性の向上や優秀な人材確保などを目的に、都心の好立地に位置するオフィスは引き 続き選択されるとみられる。それに伴い投資需要においても、再開発が進むエリアやハイスペックな大型ビルについては底堅く推移することが予想される。
供給側は、ビルやエリアにおいてハード・ソフトの両面から DX を推進するとともに、企業の多様な働き方の実現や社員の健康向上に貢献できる場を提供するなど、エリアの付加価値向上に取り組むことが求められる。 地方都市において、観光業は未だ逆境にあるものの、軽井沢など都心部から好アクセスなリゾート地では移住やワーケーションの需要が高く、新たなワークスタイルの定着とともに今後も発 展が期待される。また、海外から見た日本への観光ニーズは今なお上昇しており、アフターコロナに向けた受け入れ体制を万全に整えておくことで、将来的にはインバウンドの回復が期待でき る。地域や自治体は、来たるインバウンド受け入れの本格的な再開時における旅行者の安心安全 を実現するため、感染対策の徹底だけでなく、ワクチン接種証明の活用といった体制構築を進め る必要がある。さらにその上で、温泉や和食といった日本独自の魅力の発信や観光 DXの加速、観光人材の育成などに官民が一体となって取り組むことで、観光地としての国際競争力強化を推進していくことが求められる。
森トラスト㈱ 代表取締役社長 伊達 美和子氏
森トラスト㈱ ホテル計画
森トラストグループでは 2021 年 3 月 31 日現在、全国に 27 件のホテル&リゾート施設を展開しているほか、東京都心部では 2 件、ほか 14 件の新規ホテル開発を計画。計16 件のホテルプロジ ェクトを推進している。