全員が同じ方向に一気に向かってしまう日本酒業界のよくない傾向を危惧している
島田 日本酒業界に起こる流行について、どう思いますか。
竹村 もちろん日本酒にも流行があっていいですし、あるべきだとも思います。ただ、日本酒業界ではいつも全員が一気に同じ方向に向かってしまう傾向が強いことを私は危惧しています。それはまるでレミングの死の行進のようなもので、おかげで日本酒業界は常に盛り上がりそうなときに盛り下がってしまうのです。
私にとってその最初の記憶は 高度経済成長です。あの時代は「大きいものはいいことだ」と言って、三増酒ばかり造ってしまった。純米酒の3倍の酒を醸造アルコールと糖類、酸味料で造ればどの酒も変わりません。当然ピークは去り、その後の日本酒マーケットは地盤沈下してしまいました。
その動きに危機感を抱いた人たちが日本名門酒会を創立し、そこから地酒ブームが起こり日本酒業界は復活しかけました。地酒ブームが一定のところまで盛り上がってきたところで止まっていればよかったのですが、そこから吟醸酒ブームが起きてしまいました。
吟醸酒だけならまだよかったのですが、あらゆる酒が磨けばいいという風潮になります。すべてが同じように磨くようになって、またレミングの死の行進です。本醸造だろうが、純米だろうが、全 磨けばいいとなる。高知県はもともとすっきりタイプの酒なので、淡麗辛口にすべてが寄ってきたその時代にはどの酒もそっくりになり沈没していきました。