昨年11 月にマカオで開催された「グローバルリーダーシップ育成プログラム(GLDP)」の様子。IR 企業で働く中堅社員と日本からの参加者の混成グループによるディスカッションも盛り込まれている
マカオがラスベガスのカジノ収益をしのぐ世界一のカジノ都市ということはよく知られているが、一方で医療費が無償で15 歳までの義務教育費も無償の高福祉社会ということはあまり知られていないかもしれない。カジノ産業を厳しく規制しながらその産業規模を拡大させ、高福祉社会を実現するには、政府側にも産業側にも高度な知識・技術を持つ人材が必要だったはずだ。これから統合型リゾート(IR)が誕生する日本は、誰がこの役割を担うのだろうか。
マカオでは2002 年に40 年間にわたるカジノ営業の一社独占時代が終わった。政府のカジノライセンスの開放政策により、2002 年以降は入札によって選ばれた6社がカジノを運営する新たな時代に入った。カジノ産業は爆発的とも言える急拡大をすると同時に、新たな産業の誕生と言ってもいいほど大きく変容した。
この間、マカオ政府は、カジノ産業があることによる地域社会への負の影響を低減させ(現在、ギャンブリング障害が疑われる成人の割合は2003 年の水準を下回る)、社会秩序をまずまず保ち(カジノ関連犯罪でマカオ市民が加害者および被害者になる例は極めて少ない)、間違いなく市民の生活水準を向上させた(市民1 人当たりGDP は世界一になった)。それを陰で支えてきたのが、カジノの学術的研究を要請された公立マカオ大学だ。
マカオ大学は学術な調査・研究に基づき、政府に対しても、産業に対しても提言・助言を行なっている。また、産業に対しては高度な知識・スキルを持った人材を供給してきた。カジノ関係者すらマカオのカジノ産業がこれほど巨大なものになるとは予想していなかった2002 年に、学術研究の着手を指示したマカオ政府に先見の明があったと言えよう(※ 1)。