今年1 月に「海辺ホテル プライムリゾート賢島」の総支配人に就任した中島陽子氏。そして4 月、同ホテルは都ホテルズのブランドリニューアルに伴い、新たなホテルブランド「都リゾート 志摩 ベイサイドテラス」として再スタートした。この新ブランドとなったホテルを、同社リゾートホテルでは初となる女性総支配人ならではの視点でどのように導いていくのか。伊勢志摩のホテルマーケットの現状を伺うとともに今後の方向性について聞いた。
Profile
中島 陽子 氏
(Yoko Nakashima)
1988 年 都ホテル入社(現・ウェスティン都ホテル京都)。2008 年ウェスティン都ホテル京都マーケティング担当部長。その後、同ホテル人事総務担当部長、宿泊セールス兼マーケティング担当部長を経て、16 年志摩観光ホテル客室部長へ。17 年㈱近鉄・都ホテルズ ブライダル強化戦略プロジェクト プロジェクトリーダー任命後、19 年1 月海辺ホテル プライムリゾート賢島(現・都リゾート 志摩 ベイサイドテラス)総支配人へ就任し、現在に至る。
伊勢志摩サミット開催後、
全国からの訪客が増加
❒ 初めに昨今の伊勢志摩エリアのホテルマーケット状況について教えてください。
2016 年は「G7 伊勢志摩サミット2016」開催地ということで伊勢志摩が注目されて、ホテルマーケットも恩恵を受けました。従前は中京圏と関西圏からの訪客が多かったのですが、サミットの後に旅行会社がツアーを企画されたこともあり、首都圏をはじめ北海道や九州からのお客さまも増加しました。経済団体や官公庁の方々の視察需要も増えましたね。
また、2016 年には「アマネム」や「ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 賢島」がオープンしたこともエリアのホテルマーケットに影響を与えていると思います。これらにご宿泊のお客さまが志摩観光ホテルに食事にお越しになるケースもあり、これにより海外の富裕層のお客さまにも知られるようになって、これまでとは違う顧客層のご利用も増えたと思います。
❒ インバウンド比率やFIT 比率など顧客層の変化を感じますか。
志摩エリアはまだまだ少ないように感じますが、当社ではインバウンド比率が以前に比べ上がってきています。伊勢志摩には近鉄グループの施設が多いので、グループとして海外のインフルエンサーの誘致、海外メデイアの招聘などのインバウンド対策を進めています。その結果が少しずつ出てきているのだと思います。
インバウンドの属性としてはアジア圏が多いですね。最近は団体に加え、友人同士などFIT の小グループが増えています。
❒ ホテルが都リゾート 志摩 ベイサイドテラスへブランドリニューアルして変化がありましたか。
ブランドリニューアル以前も「プライムリゾート賢島」という名称で、中京圏・関西圏を中心に広く浸透していたと思います。ただお客さまの中には当ホテルが都ホテルズ&リゾーツのホテルという認識のない方が少なくありませんでした。そこで都ホテルズ&リゾーツのブランド再編に伴い、「都」を冠し、リゾートの滞在を楽しむことをコンセプトとする「都リゾート」のカテゴリーホテルとなりました。これからは「都リゾート 志摩 ベイサイドテラス」を皆さまに認識していただくことが私の役目の一つだと考えています。
❒ 直近の業績はいかがでしょうか。
業績は、ゆるやかですが右肩上がりに推移しています。2016 年に稼働率・ADRともに前年を大きく上回り、その後、稼働率は微増ですが、年々ADR を上げることでRevPAR はサミット前の30%以上になっています。その大きな要因の一つが、2018 年度に実施したスーペリアルームの客室改装でした。ターゲットを定め、その方々に響くような特典も付けました。その結果、スーペリアルームについては、ADR は以前に比べて6,000 円以上アップし、RevPARも上がったのです。また、2016 年~ 2017 年上期と2017 年下期以降では団体客比率が減ってFIT 比率が増加したので、ADR が上げやすい状況だったと言えるかもしれません。
❒ 好調を維持するための営業戦略についても教えて下さい。
都リゾート 志摩 ベイサイドテラスは108室の小さなホテルなので、それぞれのお客さまに滞在をより楽しんでいただくための取り組みをしていきたいと考えています。その一つがお料理です。さらにインバウンドも含めFIT の集客にも注力していきたいと考えています。当社グループを利用されるインバウンドは現在、中国、台湾の東アジアが中心ですが、今後は欧米も含めてさらに伸ばしていく方針です。