AI の活用によって多くの場面で業務効率化を目指す動きが見られる今、ホテル・旅館のレベニューマネジメントにおいても、より正しい予測による収益と効率の向上が求められている。
コンサルティングサービスを提供する株式会社亜欧堂の堀口洋明氏と、「世界中の価格を最適化し、売り手も買い手もうれしい世界を創る」をミッションとして事業活動を行なう株式会社空の松村大貴氏が、レベニューマネジメントの捉え方について語り合う。
ホテルや旅館にとって、レベニューマネジメントの重要性とは?
堀口 産業特性から考えて、ホテルが収益を向上させるためにはレベニューマネジメントは外すことのできない手法と言えます。ホテルの産業特性とは「供給量を変えることができない」という点に尽きると思います。
需要のピークに合わせて客室数を増やすことはできませんから、「この時期は客室が埋まるだろう」という予測に基づいてコントロールしていく仕組みを構築するしかありません。
そこを価格によってコントロールするのがレベニューマネジメントであり、利益を上げたいところで客室の料金を上げられるようにするのです。
旧来の料金設定や販売方法では
マーケットの環境に対応できない
松村 旅行者は増えているけれども、現場をオペレーションするスタッフが足りない、データを扱ってレベニューマネジメントを行なう専門性の高い人材が足りないという悩みを持つホテルが多いと聞いています。
旧来の料金設定や販売方法では、ホテル業界を取り巻く現在の環境に間に合わなくなってきているのが現状です。
マーケットのニーズに適合させるための時間が足りない。同じ日付や曜日であっても、昨年と今年ではお客さまの動きがまったく違っているため読みにくくなってきている。
そのため、外部の力を借りることも必要になってきているのではないでしょうか。
堀口 人手不足がかなり影響してきていることは間違いのないところです。
私たちのところに寄せられる相談も、「複数のホテルを1人の人間に見させることができないか」という内容が多くなってきています。
「毎日料金を見て客室の価格を変えていくのがレベニューマネジメントだ」と言う人もいるのですがそれは勘違いです。
理想的なレベニューマネジメントはそういうものではありません。
優れたレベニューマネージャーは最初に立てた予測がすでに正解なので、「このレベニューマネジメントを正しく捉え予測をベースに売り方を的確に変える日はこの価格で客室が売れる」という当初の予測からずれのないまま販売することができます。
つまり毎日の業務の中では自分の予測通りであることを確認するだけで済むのです。これがレベニューマネジメントの理想形です。