株式会社エスプレシーボ・コム
代表取締役
安東徳子氏
〈プロフィール〉ウエディング業界、専門学校を中心としたコンサルテーション業を長年に渡り幅広く展開。コンサルテーションによる課題発見と解決手法を示すだけでなく、研修も並行して行うサービススタイルが確実な結果を生むことから評判を呼び、コンサルテーション業務自体のリピート率の高さも注目されている。サービス業に特化した研修で現在までに1万人以上の受講実績を持つ。そこから導き出された独自のホスピタリティ理論は業界内外で高い評価を得ている。近年では千葉県の美容系専門学校の立ち上げコンサルテーションを担当し、創立翌年から9年連続県下1位の入学者数を維持するという驚異的な結果も出した。これらの実績は『共感力』をベースとした独自理論『ECメソッド』から生まれている。
☆ホスピタリティビリティ研修についてのお問合せ
㈱ポジティーボ ホスピタリティビリティ研修係
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ホスピタリティにおける10 の資質と、「例え」を使うトークスキルは、お互いに深く関係しています。そして、さまざまなトークスキルの中でも、「例え」を効果的に使うことは、ホスピタリティにおけるコミュニケーションの質を上げることに直結しています。なぜなら、相手が未経験の物事を説明する場合には特に、相手が類推しやすい「例え」を織り交ぜることで、理解度が格段に上がるためです。
今回は「例え」についての理解を深めるために、5 種類の「例え」についてのお話をします。
「つもり」の危険性
相手がまだ経験していないことについて、その価値を伝えなければならないシーンは多々あります。
しかし、多くの人は、
「あのホテルの朝食はとてもおいしかった!」
という一言で伝えたつもりになってしまう「勘違い」を犯しがちです。
「とてもおいしい」という言葉に固有の感情を込めて伝えているつもりでも、具体性がありません。ある人は藁の納豆と炊きたてのごはんを思い浮かべ、別の人は名店のパンケーキをイメージする可能性もあるでしょう。それほどまでに差があるイメージを「とてもおいしい」という言葉で片付けてしまうと、その言葉に込めた感情は、まったく相手に伝わらないのです。
一方、ソムリエはそのワインを味わったことがないお客さまに魅力をイメージさせるため、味や香り、料理との相性、飲んだときの心の動きなどをイメージさせる、五感の表現を駆使します。そのときによく使う表現が、「柑橘類のような、フレッシュな酸味」「イチゴのような、チャーミングな香り」などの「例え」です。それは、多くの人が経験したことがある味や香りを例示すれば、特徴や体験した時の感情を共有しやすくなるためです。
人は、頭の中に思い描く情景を、そのままダイレクトに相手に伝えることはできません。相手が自分とできるだけ似たイメージを再構築できるよう、ディテールを伝える工夫、相手に共感してもらうための工夫が、「例え」なのです。