デジタルの変革は人の文化を変えていく
❒ 人の文化、人を変えていくという部分に関して、より詳しくお教えいただけますでしょうか。
モード C“D”O というポジションの仕事についてお話をする時、もちろん“D =デジタル”という言葉があるので、技術的なポジションであるとイメージをされる方が非常に多いです。もちろん確かに、データやAI、それらを駆使したチャットのシステムなど技術的なものを扱います。それが私の仕事の一つではありますが、それら技術が進化をしていくと、それを扱うスタッフ一人ひとりが変わっていかなくてはなりません。技術が進化をすれば、仕事の内容や進め方、ゲストとのコミュニケーション方法なども変化していくわけです。
そういった変化をさせていくためには、私たちがただ技術的なツールを開発するだけでは意味がありません。スタッフ各自がその価値や重要性を理解せず、使いこなせなければ意味がないからです。そのためにも、各ホテルや各部門とのコミュニケーションが必要不可欠です。コミュニケーションを通じてその価値とともに使い方を伝え、使ってもらえるようにすること。そして最終的にそれを使うことによって私たちのお客さまに満足をしていただくこと。そこまでが私の仕事です。となると、そのための教育や研修も必要であり、そういった部分までもが私の担当範囲であると認識しています。
ケラー 私の立場からもう一つ付け加えさせていただきますと、私たちのお客さまはBtoC だけでなく販売のパートナーであるエージェントの皆さまなどBtoB のお客さまもいます。
BtoB のお客さまのお話を聞いていると、彼らの目標も私たちと同じで、いかにお客さまをおもてなしの気持ちを込めてお迎えし、より良く迎え、より良いサービスを提供するか、ということです。デジタルの進化というのは、私たちやホテルのお客さまのためだけでなく、そういったBtoBのお客さまを助けることにもつながります。
モード ケラーさんがおっしゃっていただいたとおり、私たちには2 タイプのお客さまがいます。私たちはデジタルを進化させながら、BtoC、BtoB 双方のお客さまに満足していただけるものであること、どちらにとってもパーソナライズされたものであること、これが重要です。
❒ 管轄していらっしゃる部門に関して、「セールス&マーケティング」や「カスタマーエクスペリエンス」、そして「E コマース」と並列で「IT」と「データ」が並ぶのは非常にユニークだという印象です。
モード 「セールス&マーケティング」や「カスタマーエクスペリエンス」、そして「E コマース」などホテルにとって非常な要素であるわけですが、これらのさらなる向上を目指し、デジタルを用いて変革を起こそうとするとき、「データ」を用いて分析を行なうことが必要ですが、最終的なソリューションやツールを生み出すためには「IT」は欠かせません。例えばデータの分析によってお客さまのニーズを把握し、アプリケーションを開発しようとしたとき、IT のサポートが必要になってくるわけです。つまり、データとIT を組み合わせてデジタルの変革を進めていかなくてはならないのです。
一方、それらを推し進めようとするとき、場合によっては部門間での利益相反というケースも発生します。そういう時に、これらをまとめて責任を持ち、管轄できるポジションがあることで変革を推し進められる。これがあるからこそわれわれアコーホテルズのデジタルにおける野心的な戦略が成り立つわけなのです。
❒ ケラーさんのお仕事の内容について教えてください。
ケラー 私の管轄するグローバルセールスチームは7部門350 人で成り立っていますが、私の仕事を簡単に申し上げますと、主に三つの業務があります。
一つ目は実際にグローバルセールスの戦略を立て、セールスを推し進める業務。二つ目はゲストと、もう一方はお客さまであるパートナーの売上、パフォーマンスを管理し、サポートなどを行なう業務。三つ目はカスタマーリレーションです。カスタマーリレーションは前述の文化にかかわる部分ですね。デジタルの進化によって文化的な部分が変化をしていくわけですが、その変化を進めていくためにはお客さまのニーズを把握し、それに合わせたものでなくてはなりません。私たちのデジタルプラットフォームにはさまざまな情報が集まりますが、それだけでなく、カスタマーリレーションを通じてお客さまとのさまざまなコミュニケーションからニーズを把握すること、これが重要だと考えています。
トップインタビュー アコーホテルズ モード・ベイリー氏、マーカス・ケラー氏
デジタル領域への積極的な取り組みを行なうアコーホテルズ “完成”はない。常に変化をしながら戦い続けていく
【月刊HOTERES 2018年02月号】
2018年02月09日(金)