パリのパラスの総シェフ(ミシュラン2ツ星)を務める一方で、庶民向けの安くておいしいガストロノミーの普及や貧窮者の救済活動に取り組む異色シェフ、ティエリー・マルクス氏。その多彩な活動の背景を聞いた。
ティエリー・マルクス氏(58 歳)。
パリ生まれ。クロード・ドゥリーニュ、ジョエル・ロブションなどの有名シェフの元で修業を積み、1988 年、91 年にミシュラン1ツ星を取得する。96 年:ルレ&シャトー「コルディアン・バージュ」(ポーヤック)の総シェフ就任。同年ミシュラン1ツ星、99 年2ツ星取得する。2011 年:マンダリン オリエンタル パリの総シェフに就任。翌年同ホテルのガストロノミーレストラン「シュール・ムデュール」でミシュラン2ツ星取得。16 年パリに「マルクス・ベーカリー」とビストロ「レトワール・ドゥ・ノール」開店。東京の銀座に、レストラン「ティエリー・マルクス」、「ビストロ・マルクス」を開店。
数年前から、刑務所に出向いて服役者のための料理訓練に取り組み、12 年にパリで貧窮者ための無料の料理人養成校「キュイジーヌ・モード・ダンポワ」(CMA)を開設。現在フランス全国に拡大している。
https://www.thierrymarx.com
Photo: Roberto Frankenberg
Q. 革新的なシェフとして定評がありますが、その秘訣は何でしょうか。
常に時代の変化に伴う食の研究をし続けることです。数年前から、食の職人、栄養士、化学者などさまざまな分野のプロと一緒に、パリ近郊のオルセー大学で「食のイノベーション」の教育研究をしています。例えば、最近の研究テーマは、砂糖を使わないパティスリー、廃棄物ゼロの料理です。
マンダリン・オリエンタル・パリのガストロノミーレストラン「シュー・ムジュール」(ミシュラン2ツ星) Photo: MOPAR