日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏による日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝えることで、海外からのお客さまをおもてなしするホテル、レストランの力を向上させるためのヒントをお届けしていく本連載。今回も前回に続き、宮城県仙台市で300 年以上の歴史を持ち伊達家御酒御用蔵を務めた勝山酒造の十二代目、伊澤平藏氏を迎え、日本酒造りの底力について、弊社オータパブリケイションズ代表取締役の太田進を交えた鼎談でお伝えする。
島田 律子(しまだ・りつこ)
タレント・日本酒スタイリスト(日本酒造組合中央会認証)。
日本酒関連の講演・イベントの司会や出演など年間50 本以上をこなす。
TV や雑誌などのメディア出演・コラムの執筆も多く、イベント、飲食店、百貨店、酒器のプロデュースやコーディネートなど、日本酒の魅力を伝える活動は国内外を問わず多岐にわたる。近年、女性ならではの視点から、日本酒の美容・健康効果に着目。日本酒の美肌・美白・アンチエイジング効果を取り入れたライフスタイルを提案し、自らもその生活を実践する。2016 年にはSMILEBREW COMPANY を立ち上げ、「日本の美を日本酒で」をテーマに『オトナの日本酒TASHINAMI 塾』を主催する。 HP:http://www.smile-brew.com/
伊澤平藏 (いさわ・へいぞう)
仙台伊澤家 勝山酒造株式会社 十二代目蔵元・代表取
締役会長
昭和35 年生。仙台に元に移転。
現住所:宮城禄元年(1688 年) 創業、安政四年に仙台藩伊達家御用蔵拝命し 現在の仙台市青葉区上杉山通り北五番丁角に御用蔵を建てた。平成17 年に高級酒製造に特化した全量純米蔵として現在地県仙台市泉区福岡字二又25−1
いままでにないものを生み
出していくのが伝統の力
伊澤 実は、10 年前に思い切って蔵をすべて純米酒蔵に一新してそれまでの約2000石から300 石へと規模を縮小しました。戦術的な転換でなく戦略的転換でした。なぜかというと生産量を増やしすぎると品評会に出品するタンクには力を入れるが、それ以外は手間暇かけられないという状態になりがちだからです。そこで当社では生産量を七分の一にして仕込みは毎週1本とし、すべてのタンクを手間暇かけて納得のいく日本酒造りができる態勢にしました。開放タンクを採用することでもろみの表面(ツラ)がのぞけるようにしてその機嫌(状態)を目で見て判断しています。醸造用アルコールの添加、活性炭の使用、ブレンド作業などもすべて止めました。思い切ったことをした方が結果的に伸びるのではないかと考えたのです。
太田 リスクを考えるとなかなか踏み切れないことですね。そこがすごいところだと思います。大企業は人を減らして機械化し効率化を図ろうとしますが、それとは逆の発想で手間かけてもっとよいものをつくるという方向なのですね。