1887 年の開業以来、「贅」と「歴史」、「コロニアル様式の空間」が美しく織り交ざり、東洋のロマンを凝縮したアイコン的な存在のホテルとして世界中からファンを獲得しているラッフルズ ホテル シンガポール。2017 年2 月に着工される改修計画では、ラッフルズが持つ独自性のある伝統を守りながら、時代に即した存在としての価値を追求し続けるための進化を目指す。総支配人のサイモン・ハースト氏に、シンガポールにおけるホテルマーケットの現状と、ラッフルズ ホテル シンガポールのブランドが持つ伝統の価値と進化する意義についてインタビューした。
ラッフルズ ホテル シンガポール 総支配人 サイモン・ハースト 氏
IR 開業によるインパクトは
ホテルマーケットに好影響を与えた
❒ シンガポールにおけるホテルマーケットの状況を教えてください。
シンガポールのホテルマーケットは、基本的に安定していて好調です。中国、インドネシア、韓国、台湾、フィリピンからのお客さまが多く、中でも中国とインドネシアは非常に大きなマーケットを形成しています。為替レートにも左右される面もありますが、ラッフルズホテルにとってもちろん日本も3位以内に入る重要なマーケットと言っていいでしょう。私が日本を訪問したのは今回で2 回目なのですが、総支配人として訪れる必要性を感じている大切なマーケットであることがお分かりいただけると思います。
ラッフルズ ホテル シンガポールでも、レジャー利用のほとんどのセグメントにおいて日本のお客さまにご利用いただいています。ウエディングについても毎月数件いただいている状況です。
❒ 2010 年に開業した統合型リゾート(IR)のマリーナベイサンズ(MBS)とリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)は、ホテルマーケットにどのような影響を及ぼしていますか。
MBS とRWS の開業によってホテルマーケットがネガティブな影響を受けることはありませんでした。むしろポジティブなインパクトの方が大きかったと思います。2014 年、2015 年については少し落ち着いてきた印象はあるものの、最近6、7年の間、シンガポールは成長が続き、ホテルマーケットも拡大してきました。
MBSとラッフルズは、時として同じお客さまをシェアすることがあります。MBSに1、2 泊してから、ラッフルズに1、2泊する、あるいはその逆というお客さまの行動が見られるということです。
そもそも両者はホテルの規模がまったく違います。MBS が3000 室近くの客室を有するのに対して、ラッフルズは103室しかありません。ラッフルズはディスティネーションホテルであり、エクスペリエンスホテルとして展開している非常に特殊なホテルであり、MBS を競合相手としてはとらえていません。IR ができたことでラッフルズの業績がダメージを受けるようなことはありませんでした。
❒ ディスティネーションホテルとしてのラッフルズの魅力はどこにありますか。
ウェブサイトの口コミで、ラッフルズがお客さまから高く評価されているのは、スタッフのサービス面です。アフタヌーンティーやシンガポールスリング、サンデーブランチ、ターバンを巻いたドアマンといったラッフルズが持つ伝統を、スタッフの高いホスピタリティーを通じて体験していただくことで、お客さまにその魅力を感じていただけているのだと思います。
お客さまがシンガポール旅行を終えて帰国したときに、「ラッフルズに泊まってきた」という言葉が最初に口をついて出てくるように、私たちはホテル滞在中の体験を重要なものとしてとらえ、提供しているのです。