すっきりしたデザインで解放感のあるレストラン兼ラウンジ
村上 すべてつながっているのですね。さまざまな事業を手掛けられる中で、今回さらにホテル事業に参入しようと考えられた背景は。
長谷川 介護施設を運営する中で高齢者とかかわる機会が多くあり、ホテルと高齢者をマッチングできるのではないかと考えたのがきっかけの一つです。
私たちが運営する高齢者向けの施設では主に介護を必要としている方たちが顧客となっていますが、ご高齢でも元気な方も約3 割いらっしゃいます。こうした高齢者にホテルを利用してもらえれば、需要拡大や安定につながるのではないかと考えました。昭和一桁けた生まれと二桁生まれでは行動が違い、後者はおいしいものを食べて海外旅行も満喫する世代です。ゆくゆくは、そうした世代の方たちを会員組織にして日本中のホテルを移動できるようにしたいというのが私のホテル構想の一つの柱ですね。
政府が2020 年までにインバウンド4000 万人という目標を掲げて、いまホテル業界は大変好調ですが、ひとたび世界的な影響のあるようなアクシデントが起これば需要が激減するようなリスクファクターがたくさんあります。私はそれを高齢者需要でヘッジできると考えております。
村上 会員制リゾートホテルも同様の仕組みで、メディカルやタックスマネジメントの要素も取り入れ成長していますが、同じようなお考えですか。
長谷川 会員制リゾートホテルそのものを考えているわけではありません。1カ月40 万円ほど支出されている高齢者家庭も多いので、それをわれわれのホテルに転嫁していただければ採算はとれると見込んでいます。暑い時期は北海道に半年、寒い時期は沖縄に半年といったように。ご自身の体力に応じて移動できるというのが、これからの高齢者が喜ばれるメソッドではないでしょうか。
村上 ホテルの一部に会員用のレジデンスエリアを設けるといったイメージでしょうか。
長谷川 そうですね。ホテルのいくつかのフロアを元気な高齢者用とカテゴリー分けして、フロントにヘルパーも常駐させるといったイメージです。ホテルならさまざまなご要望に24 時間対応も可能ですし、もちろん食事も提供できますので。われわれは洋服のクリーニングもあつかっており、一時的に洋服を保管することもできます。こうしたサービスもうまく活用していただければよいのではなでしょうか。
村上 目の付け所が素晴らしいですね。ライフスタイルの変化の一歩先を見越したビジネス展開だと思います。
長谷川 ありがとうございます。われわれははやりに目を向けず、流行に左右されない、根っこの部分でビジネスをすることを念頭に置いています。
岩本 これまで新規事業に参入される際は3 年ぐらいノウハウをためてその後一気に事業を拡大するという戦略をとられていたように思いますが、ホテルに関してはいかがですか。今後の展開やセグメントなどについても教えてください。
長谷川 ホテル事業については時代をどう読むかが成功のカギだと思います。ホテル業界参入を構想したのは昨年の10 月だったのですが、通常のホテルだと開業までに最低でも18 カ月は必要なので、まずは早く開業できて利益に結びつくキャビン型ホテルからスタートすることにしました。もちろん既存のホテルを買収すればもっと迅速に営業が開始できるのですが、コンセプトやデザインも一から創つくりあげたいと考えたのです。
今後のホテル出店については、契約済み、合意済みを合わせて11 カ所が決まっています。セグメントはリゾート型、宿泊特化型、キャビン型など。これから一気に建設していき、完成は来年、再来年を予定しています。
ホテル事業は立地するエリアや経済条件で大きく左右されると思いますので、よいロケーションで納得できる金額でなければかかわらないつもりでした。介護の案件のときもそれは同じです。ここにきてわれわれの条件に合う物件が出てきたので、ホテルも一気に立ち上げる計画です。
岩本 ホテルの出店方法には、新築、既存のホテルコンバージョン、M&A などがあると思いますがどのスタイルで進められていく予定ですか。
長谷川 現在、既存ホテルは国内・海外のリートが取得を競っており高値になりすぎている、また既存の物件では、我が社が培ってきたノウハウを生かせるつくりにはなっていない。そのことから、新築にて進めていく予定です。しかしながら既存の中でも、条件に見合う物件があれば進めていきます。
岩本 リゾート・宿泊特化・キャビンと多くの分野を手掛けることはハードルの高い事業モデルだと思いますが、勝算はありますか。
長谷川 これに関してはよく聞かれます。介護ビジネスのときも保育ビジネスのときもさんざん聞かれましたが、それらもすべて軌道にのせることができたと話しています。自信があればできると確信しています。私は自分を慎重な突破型だと分析しているんですよ。最初の穴を開けるのは大変ですが、その穴がある程度大きくなれば優秀な人材が集まってきますから、あとは私より優秀な人材を前に置くだけです。自分の足下を徹底的に固め、私がやらなければならない仕事に邁まい進していくのみですね。
村上 さまざまなカテゴリーのホテルを展開する計画とのことですが、共通する軸は何ですか。いわばホテル経営のポリシーは何でしょう。
長谷川 人材教育を軸にしています。ホテルも介護も人づくり。売り上げを上げて利益を出すことを極端に求めてしまうと事業が崩壊してしまうと思います。売り上げと利益は言葉を換えれば人間の欲ですから。欲が上回り過ぎることはよくありませんね。心と血の通った新たな宿泊事業を創りだしたいと考えています。
われわれの事業は量を求めているのではなく質で勝負。サービスも価格も独自性を発揮することが大切です。われわれなりにホテル業界で何ができるかをこれからのお客さまとの関係で分かっていくと思います。
いまのホテル業は昔に比べると生産性も上がっているように見えます。ビジネスホテルとキャビンホテルであれば価格とニーズを合わせること、リゾートホテルはどれだけのサービスが提供できるかが重要になってくると思います。われわれは後発組で経験もありませんからまずは、謙虚な姿勢で取り組んでいく所存です。
岩本 長谷川ホールディングスの今後および長谷川トラストグループ傘下で展開されるホテル事業の今後について教えてください。
長谷川 長谷川ホールディングスは「2020 年に1000 億円」という目標を掲げ、上場も視野に入れ、既存事業であるフランチャイズビジネスサービス事業、介護サービス事業、子育て支援サービス事業のさらなる強化を図ってまいります。
そして、長谷川トラストグループで運営するホテル事業については、まずしっかりと基盤をつくり、2020 年には100 億円を実現いたします。
種類も豊富で充実した食事を提供する
「Y's CABIN 横浜関内」
〒231-0016 神奈川県横浜市中区真砂町4-43
TEL:045-651-5011
客室数:160 室
付帯施設:大浴場、レストラン兼ラウンジなど
2016 年10 月29 日㈯グランドオープン
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