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アカデミック対談 遠山詳胡子氏×SHOKO氏

28 年前、フラワーデザインの基本的な理論を構築 感性だけではない! アレンジの美しさを表現するためには 理論を学ぶことが必須

【月刊HOTERES 2015年05月号】
2015年05月21日(木)
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遠山 さまざまなことを学んでいらっしゃったからこそ、理論的な目線でフローラルデザインをとらえることができたのですね。でも先行研究のない状況はとても大変ですよね。私もブライダルに関する先行研究があまりないので、その難しさはわがことのように感じます。しかし感性を軸とした美しさは、表現者としての評価がいくら高くても、指導者の立場になったとき、伝えることがむずかしく行き詰ってしまうこともあるでしょうから、理論でとらえることの大切さは分かるような気がします。
 
SHOKO そうですね。フローラルデザインに限らず基礎的なものには理論が必要であり、理論は時間が経過しても変わることはありません。28 年前に構築した理論は今も変わることなく教え継がれています。もちろん、精度の高いデザインをするためには理論だけでは作り出せません。理論と感性のバランスとの融合が必要であることを理念としてとらえています。理論と感性の融合によりコンテンツが確立されます。
 
遠山 感性を磨くためにはどのようにしたら良いのですか。
 
SHOKO その時代や環境の変化で美しいと評価されるものも変化します。世界中の美しい人を見たり、美しい作品を見たりなど、常にアンテナを張り情報収集に努めることです。そして変化を敏感にとらえ理論と融合させて表現し続けていくことです。しかし基礎的なことがブレないよう指導者のチェックを行なっています。ブレは指導者が基礎を自分流にアレンジすることで生じます。ただ自分自身、後輩ともに成長し続けていくために、日々勉強し続けることも不可欠なのです。
 
遠山 私も今、大学院生として国際観光を学んでいますが、本当に学ぶこと、学べることが楽しいですね。先生方が数十年かけて研究し続けてきた研究を学生は短時間で効率よく学ぶことができます。先日、SHOKO 先生の講義もお聞きしし、とても理論的で分かりやすく楽しい時間をすごさせていただきました。SHOKO 先生はニューヨークを拠点として日本全国および海外に系列のブランチなど、世界を舞台にフローラルデザイナーの将来に貢献されていらっしゃいますね。
 
SHOKO アメリカはじめオーストリア、パリなど海外3 ブランチ、国内全国で24 の「SHOKONEW YORK」のブランチを設置しています。国内および海外で受講者には「米国IFDA.NY 認定」の資格をお渡ししているのですが、数千人におよんでいます。資格にはウエディングフローラルデザイナーやブーケデザイナー、フローラルデザイナー、インストラクターなどがあります。初心者、経験者を問いません。
 
遠山 例えばインストラクター資格取得はどのようなステップで行なわれていらっしゃるのですか。
 
SHOKO 基礎科、研究科、研修科、専攻科、インストラクター資格取得科の順で進めていきます。理論的なことを深めながら内容を凝縮させた短期集中プログラムもご用意しています。最短15 日で資格取得が可能です。まずは二次元の面にお花の色と種類を散らすことを、いくつかの基本スタイルで学びます。次は面から三次元の立体へ移行します。研修科ではフローラルデザインの基本理論の元になる「重心とバランス」と「色彩比較比重論」の一端に触れ、四次元である時空間、つまり存在する生活空間へと進んでいきます。お花を自由自在に使い、自己の感性アップを目指します。その後、専攻科でブーケの基本を学び、インストラクター資格取得科では教えるという技術はもちろんのこと、基礎科の指導要領(指導法)や指導者としての素養など、レッスンを通して自然に身につけることができます。一人でも多くの方にお花を指導していただきたいというコンセプトのもとに作り上げたプログラムなのです。
 
遠山 SHOKO 先生のお花に対する思いが凝縮されたプログラムでもありますね。ウエディングでは最近、単にテーブルにお花をアレンジするのではなく、まさに四次元の世界でヨーロピアンスタイルやブリティッシュスタイル、ニューヨークスタイルなど、欧米のスタイルをテーマとした空間創造が求められています。
 
SHOKO ヨーロピアンスタイルはフランスやイギリスではなく、ベルギー、オランダ、ドイツを指します。生活環境や住居環境、気候などから各国のスタイルが生まれています。ヨーロピアンスタイルは自然の植生を生かした自然体のため、花を平面的にとらえ左右バランスを基本に鮮やかなアメリカスタイルより立体的で色のトーンも抑えられます。ポルトガルやオランダは住空間が狭いため、花をギッシリ詰め込み、縦ラインで表現します。いずれにしても住空間やバンケット空間における重心とバランスが重要なポイントとなります。オブジェなのかメインなのか、立体的なのか平面的なのか、また左右対称なのか縦ラインかなどで、空間の印象は変わります。もちろん、色彩も重要なポイントです。
 
遠山 花の芽吹く、咲く、種を残すなどの生き様は、人間の原点でもあります。そんな背景を持ったお花が生活の中に根づいて受け継がれてきた各国のスタイルは、どれも奥深いですね。目線に入るものだけでなく、入らなくても空間として落ち着きを与えるものまで、すべての基本はSHOKO 先生が整理して提唱されている理論に基づいているのですね。
 
SHOKO ウエディングやお花には、感性学も必要です。感性学は美学とも言われ、美の本質や構造を探究する哲学でもあり、5年前より早稲田大学でも教えています。美しいものを経験的、形而上学的に探求する学問です。加えて脳科学的に落ち着く色や活性化する色などを知るためには脳科学も求められます。個々が持つ審美学(美学)を追求し、それに加えて経験や個々の本質による求めている色を融合させることで求めている空間を作り出すことができます。余談ですが、好きなお花や心休まるお花が何かをお聞きするだけで、結婚相手として求めているタイプやその方の考え方も把握することもできます。花は本当に奥深く、さまざまな学問と融合させることで、人々に個々が求めている喜びや楽しさ、安らぎなどを提供することができるのです。
 
遠山 そう言えば、先生のセミナーで私もそんな質問を受けました。長年集められた厖大なデータと分析に裏打ちされた「傾向」を知ると、初対面でも相手の人間性や心境の仮説が立てられますから、怖さも軽減されそうです。日本もニューヨークのようにホテルはスペースを貸すだけで、あとは自由に空間を作るスタイルに変わっていけば、ますますそれぞれの気持ちを知り、表現する力が求められるようになりますね。
 
SHOKO そうですね。お二人の願いをかなえることがウエディングプロデューサーの役目です。希望のスタイルや予算をお聞きするとともに“さぁ、一緒に行きましょう!”と手を取り合いながら船を並行して漕いでいく感じですね。“やってみたい? やってみましょうか!”と少しずつ思いを形にしながらゴールに向かっていく、そんな感じです。どのゲストからも喜ばれる結婚式を作り上げることもプロデューサーの役目です。その気持ちが大切です。それは理論がある以上、基礎力は後からつけられるものなのです。
 
遠山 新郎新婦と手を取り合い併走して行くことは、多くのブライダル関係者が目指していることですが、実は簡単ではありませんよね。自分の経験値や熱い思いというフィルターを通すと、時として「自分」が出すぎてしまいますから。ですから建築家が設計図で確固たる基盤を作ったうえで家や部屋をデザインするように、まずは理論でぶれないようにするというSHOKO先生のお話を伺って目の覚める思いでした。理論と感性の融合、さまざまな学問との協調は、フラワーだけにとどまらずホテルやブライダルのあらゆる場面で必要だと実感いたしました。
 
対談場所:アトリエ木下代官山店

SHOKO 氏
株式会社IFDA 理事
米国IFDA . NY 理事
早稲田大学文学学術院 特別講師
SHOKO NEW YORK 代表
RAMSCALE(Manhattan, NY)顧問
特定非営利活動法人感性総合研究所 理事

遠山詳胡子氏
株式会社MCS 代表取締役
東洋大学 国際地域学部国際観光学科
非常勤講師
東洋大学 大学院国際地域学科研究科
国際観光専攻博士前期課程

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