ビーイー㈱ 代表取締役 安田仁実氏
インタビュアー:㈱オータパブリケイションズ 代表取締役社長 太田進
〈プロフィール〉当時専門性が少なかった婚礼美容に疑問を持ち、ブライダルという特別な日に特化したフリーのヘアメイクアーティストとして活躍。この想いをさらに広げたいと2002 年神戸に自身のスタジオを設立し、お客さまや提携会場から信頼を得て、ブライダルを中心に活躍の場を広げてきた。2009 年には日本初のウエディングシューズブランド「BENIR(ベニル)」を立ち上げ。さらに10 年、より実践を重視した即戦力のあるアーティスト育成の必要性を感じ、ヘアメイクスクールの取り組みも開始。12 年には京都、14 年には大阪にスタジオの拠点を増やし、常に進化する企業展開を行なっている。
〈企業データ〉
兵庫県神戸市中央区山本通2-4-27 1F
TEL: 078-222-2177
URL: http://www.bie-and.co/
婚礼美容に特化した事業を展開しているのが神戸に拠点を構えるビーイー㈱だ。パーソナルビジネスからカンパニーを目指し、新卒採用や顧客の管理システム化など、婚礼美容界の改革に挑んでいる。足元から美しくなってほしいという思いから販売用のウエディングシューズも展開。手つかずの“210 億円市場” の掘り起こしに着手した。ヘアメイクから着付け、エステ、ウエディングシューズの販売など、ウエディングにかかわる美を追求している安田仁実社長にその思いをお聞きした。
大卒でもキャリアアップ可能な
ステップ構築
太田 婚礼美容界においてパーソナルビジネスからカンパニーを目指し、新たな取組みをされていると聞きました。
安田 年間2500 件を超えるヘアメイクを手掛けるとともに、婚礼美容にかかせないエステや、7 年前よりウエディングシューズ専門のブランドを立ち上げ、販売も開始し、ウエディングにおけるトータルビューティを追求しています。サロンは神戸、大阪、京都に構え、スタッフは現在アルバイトも含め120 人に達しました。企業として飛躍していくためには女性中心の婚礼美容ですが、男性の雇用も促進させるためにも、ヒトミヤスダメイクアップスタジオからビーイーに社名変更するとともに、3 年前より新卒者に向けた会社説明会もスタートしました。その背景には専門学校で学んだ学生も婚礼美容を選択する人が減少していることも挙げられます。美容に関する知識や技術がなくても、大学卒業生でも十分に勤めることができるステップを作り上げました。中には大学を卒業後に勤務して、3 年でヘアメイクはもちろん、エステの施術までマスターし、マネージャーとして勤めているスタッフもいます。
太田 専門学校で学ばなくとも自分を磨くためにもヘアメイクに対する関心が高いですから、大学卒業でもキャリアップできる可能性を見出したことは素晴らしいことです。女性が多い職場ということで結婚、出産対策はどのようにされているのですか。
安田 結婚や出産でいったんは現場を離れても、フリーのヘアメイクや、後輩たちへの指導者として戻れるようさまざまな技術や能力をつけられる教育プログラムを組んでいます。
ヘアメイクはもちろんのこと、エステの教育なども行ない、技術を身に付けることで当社ではなくてもどこかで役に立てることができるようにしています。
出産後に戻れるよう福利厚生も整え、働きたいという意識があれば、会社として受け入れられるよう努めています。限りある労働力や能力を最大限に引き出し、いつまでも生き生きと成長し続けていくことを使命とし、成長を見続けられることが私の生きがい、楽しみなのです。
太田 顧客満足アップに向けた取組みもされているようですね。
安田 担当者が不在でも誰もが顧客からの問い合わせや要望に対応できるよう顧客管理のシステム化や、アクションプランも導入しました。また数字は人気のバロメーターだという認識を持たせることを目的としています。優劣をつけるために評価をしているのではなく、皆で成長してくために必要なことだとも言い続けています。社内面談も行ない、会社に何をして欲しいのか、どのようになればもっと良いかなどを聞いて、より働きやすい環境を提供することで、本人たちが成長できるのであれば会社としてその要望を受け入れ実現します。一方的な評価ではなく、手を差しのべながらともに成長していくことが大切だと思います。さらに“資格は自身の努力が目に見える”という考えから、資格を取得したらレベルアップできるキャリアプランも掲げるなど、チャレンジできる環境を整えています。
家族を含め300億円市場に膨らむ
シューズ販売
太田 ウエディンシューズの販売もされていると聞きました。
安田 “足元から美しく”をキャッチフレーズに7 年前より着手したのが販売用のウエディングシューズ「ベニル」です。新婦用だけでなく新郎用も用意しています。これまでなぜかウエディングシューズはレンタルが主流でした。美しいデザインのウエディングドレスを着ても足元がレンタルのシューズではバランスがとれません。価格は平均して新郎新婦ともに上代価格で約3 万円、併せて約6 万円の売り上げとなります。中にはシューズ販売の利益で約7500 万円を上げている企業もあり、その分、集客に向けた広告宣伝や商品開発などに充てることができます。現在、年間35万組が結婚式を挙げるとすると新郎新婦購入で70 万足、市場規模として210億円となります。最近はチャペル挙式で入場する新婦の父親も購入するケースが増えており、それを見込めば300億円を超える市場規模だと確信しています。ウエディングシューズはドレスやタキシード同様にウエディングには欠かせないアイテムであり、初期見積もりからウエディングシューズ販売価格を入れるよう実施している会場も増えています。だからこそ、まだまだ十分に開拓できる市場です。単価アップや利益を得ることが厳しくなる中で上代の50%を粗利として計上できる市場が、まさに足元にあったのです。
太田 それは隠された市場ですね。しかし、レンタルシューズが主流とは驚きましたね。
安田 レンタルシューズの靴磨きが新人の登竜門となっています。靴磨きをさせることで新人は止めていってしまいます。また受注発注制ですので、在庫をかかえないことでバックヤードの有効活用をすることもできます。母親や姉妹向けにブラックやグリッタータイプのシューズも開発しました。新郎新婦そしてゲストをお招きする家族に向けた足元への提案は残された手つかずの市場として今後も取り組んでいきます。
太田 ウエディングシューズのアイデアを若手のデザイナーにやらせてみせるなど、いろいろな人を巻き込んでいくことも浸透させていくための手です。“ウエディングシューズは購入するもの”を確立させていかなければなりません。最後に今後の取組みについてお聞かせください。
安田 今後もカンパニーを目指して人材育成や評価基準などブラッシュアップを図るとともに、ベニルのウエディングシューズの認知度をさらに高めていきたいですね。企業として、個人として成長し続けることができる職場環境、商品改革など、これまで同様、地道に取り組んでいきます。