レ クレイエールの気品あるレセプションデスク
シャンパンの故郷であるシャンパーニュ地方のランス。そこに広大な敷地を有し優雅な姿で佇む白亜の館がある。ランスのランドマークであり、いまや伝説的ホテルと知られるシャトー“ レ クレイエール”「Domaine Les Crayères」である。長い間、「Boyer Les Crayères」と呼ばれて来たシャトーは、代々ボワイエ家が受け継ぎ、長年ミシュラン3ツ星を維持して、地元では「ボワイエ」の名前で親しまれていた。数年前にボワイエ家のジェラール氏が惜しまれつつ引退し、現在はポメリー家の直系、ギャルディエニ氏率いる“Gardinier Family” が新しくオーナーに就任している。現在はRelais & Chateaux の旗艦ホテルでもある。
レ クレイエールの歴史は、1875 年に大手シャンパンメゾン「Pommery」のオーナー、マダム・ポメリーが愛娘のルイーズの婚礼のためにこの敷地を購入し、建設したシャトーに遡る。このホテルは日本の帝国ホテルとの関係が深く、ジェラール氏に師事したティエリー・ヴォワザンが「レ・セゾン」のシェフを務めている。また、「ル ムーリス」でヤニック・アレノ氏の下でスーシェフを務めた現シェフのフィリップ・ミルは、今年開催された帝国ホテルの“ レ クレイエールウィーク” に招かれている。
レ クレイエールはスイートを含めて全20 室のシャトー・スタイルのホテルだ。1904 年以降、インテリアは大御所ピエール・イヴ・ロションの手により改装されている。筆者にアサインされた部屋は、真紅の壁紙で意匠されたJr. スイートで、建物中央に位置するため美しい庭園を真正面に望むことができる。暫くすると正装したソムリエが部屋を訪れ、ウェルカムシャンパンを注いでくれる。メインダイニング「Le Parc」はホテルの白眉であり、絢爛豪華な装飾を施した店内は思わず溜息が出るくらいだ。建物反対側には重厚なメインバー「La Rotonde」があり、庭園に突き出した形でエレガントなラウンジを用意している。他方、美しい森の庭園を歩いて行くと戸建て感覚のブラッスリー「Le Jardin」が見えてくる。
レ クレイエールはボワイエの後、一時期ミシュランの星を失ったが、現シェフのフィリップになってから盛り返し、2012 年に2ツ星を獲得し、かつての隆盛が戻って来た。ランスにはKrug やRuinart、Louis Roderer などキラ星のごとく著名なシャンパンメゾンが並び、歴代フランス王の戴冠式が行われた世界遺産のノートルダム大聖堂など見所満載の美しい街だ。そんなランスの“ 伝説の館” でシャンパンと美食に酔いしれるのも一興であろう。
エントランスホールを見下ろすクラシカルな回廊
真紅の壁紙で意匠されたJr. スイートは女性的な優雅な雰囲気だ。建物中央に位置するため美しい庭園を真正面に望むことができる
暫くすると正装したソムリエが部屋を訪れ、ウェルカムシャンパンを注いでくれる
バスルームのアメニティーは「HERMES」で統一されている