2023年7月19日、SCキャピタル・パートナーズとアブダビ投資庁、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが共同で大和ハウス工業より27棟からなるポートフォリオを取得し、4月1日には27棟のうちの23棟を「アコー」ブランドのホテルとしてリブランドオープンした。本インタビューではSCキャピタル・パートナーズの会長であり創業者であるスチャッド・チアラヌサティ氏と、同社が取得した施設のアセットマネジメントを行なうジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズの代表取締役社長、青木陽幸氏に本投資の狙いや今後の構想について聞いた。
SCキャピタル・パートナーズ
Chairman & Founder
スチャッド・チアラヌサティ氏
Suchad Chiaranussati
ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズ
代表取締役社長
青木 陽幸氏
Hiroyuki Aoki
アジア太平洋に特化した
プライベート・エクイティ・ファンドの視点から見る
投資市場としての日本のポテンシャル
―まずはSCキャピタル・パートナーズについてご紹介をお願いします。
スチャッド・チアラヌサティ氏 SCキャピタル・パートナーズは60を超える世界中の機関投資家からの多様な資金プールを保有するアジア太平洋地域に特化をしたプライベート・エクイティ・ファンドで、19年の実績を持っています。
日本では複数の不動産投資を行なっているほか、日本最大のホスピタリティー上場REITであるジャパン・ホテル・リート投資法人を有しています。
―昨年大和ハウス工業からの27軒のポートフォリオの取得をされました。また、そのうちリゾートエリアの23軒を大きな投資による改装を経てアコーブランドのホテルへリブランドオープンされました。
まずはアジアで豊富なホスピタリティーを含めた不動産投資の経験が豊富なチアラヌサティ氏の視点から、日本のホテル投資市場としての魅力はどう映っているのでしょうか? また、今回リブランドオープンをされたリゾートエリアの投資市場といての魅力についても教えて下さい。
スチャッド・チアラヌサティ氏 まず、日本のホテルマーケットに関してですが、日本は大きなポテンシャルがあると感じています。私達は2010年に最初のホテルを東京・日本橋に取得し、その後継続したファンダメンタルズの分析からも、また、インバウンドの数が順調に成長していることからも、投資市場としての魅力はさらに高まっていると考えています。新型コロナウイルスの流行で一時的にホテルパフォーマンスは大きく落ち込みましたが、2023年、2024年と急速に回復をしたのを見ると、私たちの見立ては正しかったと考えています。
また、日本の観光経済を長期的な目線で考える時、日本政府が力強く後押しをしているようにインバウンド需要は欠かせません。人口統計の観点からすれば、少子高齢化が進む中日本は今後内需だけに依存していては経済が衰退していくと考えられるからです。
そして、リゾートエリアのポテンシャルに関してというお話ですが、今後さらに多くのインバウンドゲストで盛り上がる、つまり大きなポテンシャルを持っているであろうと見ています。日本は自然の美しさがあり、四季もあり、そのエリアや四季に応じてスキーやダイビング、フィッシングなどさまざまなアクティビティーを楽しむことができます。そして、美しい文化や素晴らしい食体験もあります。デスティネーションとして非常に大きなマーケットポテンシャルがあると言えるでしょう。
私達はジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズをパートナーに東京や千葉、関西や福岡といった都市部にホテルを所有しています。日本を訪れるインバウンドが増える中で私達のポートフォリオに何が欠けているのかといえばリゾートホテルでした。日本に初めて訪れる人は都市部を訪れますが、二回目以降は更にその先を求めます。そのような中で、大和ハウス工業グループであった大和リゾートはそうしたエリアの非常に良い場所に美しいホテルを持っていたため、今回の取得に至りました。
アジアからの集客を狙った
アコーとのパートナーシップ
―数あるホテルオペレーターの中からアコーを選んだ理由について教えて下さい。
スチャッド・チアラヌサティ氏 私たちはこれまでアコーだけでなくマリオット・インターナショナルやヒルトン、そしてニッコー・ホテルズ・インターナショナルなどさまざまなホテルオペレーターとパートナーを組んでホテルを所有しています。また、自分たちで運営をしているホテルもあります。
それぞれのオペレーターの魅力を知っている中で今回アコーを選んだのは二つの理由があります。一つ目は前述の通り私たちがアコーをパートナーに迎えたホテルを所有しているということでアコーに対する理解があるということ。もう一つはアコーがアジア地域で非常に多くのホテルを展開し、数多くのロイヤリティプログラムのメンバーを抱えている一方で、国内のアコーブランドのホテルはそれほど多くありませんでした。
日本でのホテル運営を考える時、対象となるインバウンド顧客の多くはアジアが中心となるでしょう。今回リブランドをしたホテルはそうした需要の受け皿になれると見ています。
ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズと
タッグを組んで積極的に投資機会を探る
―ジャパン・ホテル・リート・アドバイザーズは今回アセットマネージャーという立場でホテルに携わるわけですが、ホテル運営に関して積極的に関わっていくお考えはあるのでしょうか
?
青木 陽幸氏 積極的に関わっていこうと考えています。一般的に多くのホテルアセットマネジメント会社はわれわれのように深く関わることはあまりありませんが、それは彼らがホテル運営に関するノウハウを持っていないから運営会社に任せるしかなかったのだと見ています。
しかし、私たちは約10年のホテルアセットマネジメントの経験を経てノウハウをゆうしておりますし、エンジニアチームもあります。私たちはホテル運営への積極的な関わりを以てホテル資産の最大化を図っていきます。
―SCキャピタル・パートナーズとしては今後も日本のホテルに継続的に投資をしていくというお考えでしょうか?
スチャッド・チアラヌサティ氏 もちろんです。昨年も大和ハウス工業のポートフォリを含めて30以上のホテル資産を取得しました。今後も継続して興味深く投資の機会を探っていくつもりです。