株式会社Aカードホテルシステム(本社・東京都千代田区)は3月12日、東京都千代田区の大手町サンケイプラザにて同社システムの加盟施設を対象としたイベント「第26回Aカードトップ会」を開催した。
同社は独立系ホテルを中心に、キャッシュバックシステムが備わったポイントカードシステム「Aカード」を運営。2024年2月末時点で480ホテル(5万727室)と35レストランの計515施設が加盟し、会員数は約150万人を数える。
例年、加盟施設が一堂に会する同イベントを開催しており、ホテル業界の近況や出張ビジネスマンの宿泊動向の解説をはじめ、識者による講演、加盟ホテルが手掛ける売上向上施策について紹介される。
2022年および2023年時はオンライン形式にて開催していたが、26回目の開催となった今回は2020年ぶりにリアル開催にて取り行い、178名の業界関係者が参加した。
はじめに、代表取締役社長の内藤 信也氏より全国の客室売上の動向として2019年比で2023年は13%増の水準であり、出張ビジネスマンの宿泊需要はコロナ禍において減少幅が少ないセグメントであったと発表。
同社会員の延べ宿泊者数の傾向として、2019年同月比で2020年の71%以降、81%、83%、2023年は89%と推移していることから出張需要の底堅さや、1日当たりの新規登録会員数が2019年時330人から、2024年現在は385人の水準にいたるなど盛り上がりぶりを見せる。
加えて、昨今の半導体工場やEV電池工場の建設ラッシュ、来年の施行を見込む国家公務員の定額制から実費精算への宿泊規定の変更は、ポイントをキャッシュバックとして還元可能な「Aカード」が宿泊市場において優位性を高く打ち出せるとし締めくくった。
続いて、営業開発部 部長の瀬上 悟氏より会員や加盟ホテルへのアンケート結果をハイライトで発表。会員アンケートは2024年1月調査時、6452人の回答結果をまとめたもの。
同調査において、出張に伴う平均宿泊日数は年間で40泊(前年39泊)、宿泊規定の実費精算の比率58%(前年同)、定額制の比率35%(同36%)、実費精算の1泊平均利用金額7751円(同7221円)、定額制の1泊平均利用金額6882円(同6297円)であったという。
同社は以前より、各企業の宿泊規定は実費精算がトレンドであり、今後徐々にその割合を増していくと指摘している。平均利用金額の上昇は、全国の宿泊施設における客室の販売単価増加が影響していると見られる。
加盟ホテルのアンケート結果(回答236ホテル)の中で「朝食」の項目では、朝食形式で「和洋バイキング」(139施設)、「和・洋定食」(76施設)、「その他」(28施設)となった。コロナ禍ではブッフェ形式での提供が取りやめになっていたケースが多かったが、ゲスト満足度の追求からブッフェ形式に戻す動きが見られる。瀬上氏は昨今のゲストが朝食の味や質を求める傾向にあると発した。
識者講演ではジョブズリサーチセンター センター長の宇佐川 邦子氏が登壇。「これからの宿泊業の採用と定着」をテーマに、労働市場の現状から働き手の心理、人手不足が慢性化するホテル業界における具体的な施策について解説。
中でも、「定着」として自ホテルの離職要因を把握し対策することが「採用」よりも急務だという。採用・育成コストの問題、人事のモチベーションの低下、職場雰囲気の悪化など離職要因に対策をしなければ負のスパイラルに陥ると警鐘を発した。
その上で、離職要因への解決策を採用PRに付け加えることが効果的だという。離職の際、本音が表に出て来ないことが往々にしておきるため、シビアな視点で自ホテルを見つめなおすことが重要であろう。
加盟ホテルの取り組み事例ではつくばの湯 アーバンホテル 取締役副社長の塚本 忍氏による「築24年のホテルが“最小の自己資金”で劇的変化を遂げた術とは?~使わな損損、補助金の最強活用術~」、草津第一ホテル 代表取締役兼支配人の北川 喜春氏による「売り手よし×買い手よし×世間よしのホテル運営~地域No.1ホテルをめざして~」、ジャストインプレミアム豊橋駅新幹線口 支配人の井畑 真裕氏による「朝食改善による競合店対策~地元企業とのコラボレーション~」が紹介された。
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「Aカードホテルシステム社が2024年版『出張ビジネスマンのホテル利用実態』&『経費アンケート』公開」
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文・オータパブリケイションズ 臼井 usui@ohtapub.co.jp