コロナから完全復活。日本の入国者総数の上限撤廃から1年。今だから振り返るザ・ペニンシュラホテルズのコロナ中の苦労、グループ全体の姿勢とそこからの回復、新たな取り組みと希望、日本や東京のデスティネーションとしての魅力など、ザ・ペニンシュラホテルズのアジアを代表する”三銃士”であるアジア地区統括総支配人ジョセフ・チョン氏、ザ・ペニンシュラホテルズ初の日本人総支配人となったマニラの総支配人大場正久氏、そして東京の総支配人マーク・チューン氏に伺い、そして三人の素顔にも迫った。
※2023年9月12日にアジアを代表する総支配人3名が一同に会したGMロードショー2023が先日ザ・ペニンシュラ東京で開催された様子をインタビュー動画におさめましたので、全編動画もご覧ください。
https://youtu.be/v9_zoqCqL94?si=4JesOXCe1-EOphg9
お客様へのザ・ペニンシュラ・プロミスという約束。
それを実現していく会社のDNAを担う従業員は企業のDNA。ホテルを特別なものにしているのは従業員そのもの。
ー 香港上海ホテルズ社 アジア地区 統括総支配人 ジョセフ・チョン
(Regional Vice President, Asia, The Peninsula Hongkong and Shanghai Hotels, Limited)
香港上海ホテルズ社 アジア地区 統括総支配人 ジョセフ・チョン氏
ザ・ペニンシュラホテルズと他のラグジュアリーホテルとの違いは?
チョン氏:この質問は良く聞かれますが、私共は小さいグループだからこそ本当に特別であるのだと言えます。小さいからこそ、類を見ないほどのラグジュアリーさを保つことができると言っても良いでしょうし、そして、これは必ずしも私共のユニークなセールスポイントであるという意味ではありませんが、ブランドをこれほどユニークにしている基本は、やはりザ・ペニンシュラホテルズ自身が各ホテルを所有し、自分達で管理し、自分達で運営している、という非常に特別なビジネスモデルを持つ会社だからなのです。
これは何を意味するのか?つまり、自社のブランド・プロミスがグループ全体に浸透し、戦略的なビジョンをどのように描くか、何をしたいかを全体で同じ方向を見ることができるのです。小規模だからこそ、ペニンシュラと関わること、あるいはペニンシュラで体験することがどのようなことなのか、その特別な感覚を集約し、作り上げることができるのです。
私共のユニークなセールスポイントをあえて言うならば、非常に大胆なアプローチという部分ではないでしょうか?確かに高額なホテルだと言われるでしょう。しかし、私共のブランド・プロミス=ザ・ペニンシュラプロミスは常に、旅行者であるお客様に、可能な限りシームレスなご到着時とご出発時の体験をお約束することなのです。
当グループの本社におります優秀なチームがこのように提案しました。「もし私たちが感じていること、そしてペニンシュラを象徴することを形にするならば、お客様に最高の体験を提供するというザ・ペニンシュラプロミスの要素には、「ペニンシュラ・タイム」が含まれるべきだ」と。ペニンシュラ・タイムとは、到着日の朝6時からのチェックイン、出発日の22時までのチェックアウトを可能とします。これはまさしく我々ペニンシュラグループのユニークセリングポイントでもあるのです。
これが”私たちの約束です”と断言・公言しているホテルはないでしょう。「より早くチェックインしたい場合は、お電話ください。空室があるかどうか確認します。」という対応が多いでしょう。しかし、ザ・ペニンシュラプロミスは、はっきりとしています。お客様が朝6時に到着された時点で、お客様が落ち着ける宿泊場所を確保することなのです。
仮に、その時間帯にご希望の宿泊場所が空いていなかったとしても、お休みいただいたり、必要であれば荷解きなどをしていただくための代替場所を必ずご用意いたします。
つまり、お客様にご旅行の不安を感じていただきたくないのです。「早く到着するがどのように過ごそう?」「出発まで時間があるが何をすればいいのか?」など。
これは、すべてのお客様にペニンシュラが提供している快適さを感じていただきたいというブランド・プロミスなのです。そして、これは非常にユニークなセールスポイントであり、会社として多くの投資をしている部分と言えます。
ザ・ペニンシュラ香港
グループの直近、中期、長期の事業目標を教えてください。
チョン氏:短期的、中期的、長期的、どれにおいても、利益水準が常に健全なレベルにあるということは、どの企業にもある哲学です。そのことに議論の余地はありません。
しかし、短期的な話をするならば、私たちの短期的な目標は、人材獲得に最善を尽くすことです。これは非常に重要なことなのです。素晴らしいブランドを持っていても、素晴らしい才能が無ければ良いホテルにはなりません。私たちペニンシュラがいつも言っていることのひとつは、スキルで雇うのではなく、人柄で雇うということです。なぜなら、性格を型にはめるのは常に難しいからです。スキルがあっても性格が合わなければ、ホテルでは通用しません。ですから私たちは、ペニンシュラに合う性格の人、ポジティブなモチベーションを持った人、自分をどのように成長させたいかという明確な目標を持った人を採用することが大切だと考えています。もし彼らにスキルがなくても、ホテルにはトレーニングを行えるスキルのある従業員が多くおります。
人材の獲得、教育・育成と人材開発は、私たちの会社にとって中核となる部分の一部であり、非常に重要なことなのです。従業員は当然、企業にとって非常に重要な資産であり、企業のDNAです。ホテルを特別なものにしているのは従業員なのですから。
中期的には、当然のことながら、企業として他の国での開業機会を検討し続けますが、今年イスタンブールとロンドンがオープンした今、この2つのホテルはヨーロッパで非常に重要なホテルであり、多忙を極めることになるため、新規開業の優先順位は高くありません。短期、中期的にはオープンしたばかりのこの2つのホテルの存在価値を高めることが大事になってまいります。ザ・ペニンシュラパリに続いて、ヨーロッパのポートフォリオに新たに加わったわけですから。
長期的な展望ですが、企業として、開発と発展というキーワードがやはり出てきます。会社がどのように進化していくのか、ホテルであることの先に何があるのか。「ペニンシュラがリゾートに進出することはあるのでしょうか?」という質問をよく聞かれます。それに関しては、まだ答えは見つかっておりません。なぜなら、私たちは常に主要都市の中心地で展開することを重視してきたからです。
また、長期的には、やはり各ホテルの商品力を高めていきたいと考えています。そして、カスタマーエクスペリエンスにより磨きをかけると共に、ホスピタリティ業界においてもデジタル面で時代に遅れることなく、常に最先端に位置するように心がけて行きたいと考えています。
ペニンシュラにとってデジタルはとても重要な要素の一つだと考えております。なぜなら、デジタルは "スピード "を意味するからです。
ザ・ペニンシュラ香港「ザ・ロビー」
新しいグローバル広告キャンペーン「ペニンシュラ・パースペクティブ(視点)」について教えてください。
チョン氏:「ペニンシュラ・パースペクティブ」広告キャンペーンは既にスタートしております。20年前、私たちは最初に「ポートレート・オブ・ペニンシュラ」(ペニンシュラの肖像)という素敵なキャンペーンを始めました。
もし、あなたがペニンシュラファンではないとして、「ペニンシュラの肖像」と書かれた巨大な壁画の前を通りかかったとします。様々なユニフォームを着たペニンシュラの従業員たちの姿や、ページのユニフォームを着た従業員たちの子供たちが描かれていたとしたら、それは果たして何を物語っていると思いますか?
私なら、その絵を見て浮かぶのは、「とても特別な絆」というのを想像します。そして「世代を超えた何か」というものを連想します。さらには、「従業員重視の会社」であるということも想像するでしょう。なぜなら、ブランドを強固にし、成功させているのは従業員だからです。
ですから、そのポートレート(肖像画)を通して、従業員のことはもちろん、何世代にもわたり歴史を紡いできたホテルとして、会社としてのあり方についてのメッセージを伝えたかったのです。
そして20年後、スピンオフとは言いませんが、「ペニンシュラ・パースペクティブ」は、同じようにペニンシュラの従業員を紹介しながら、その個人に焦点を当て、あるメッセージを伝えています。それは、非常にユニークな視点を持った従業員一人ひとりがペニンシュラの世界に飛び込み、彼ら自身の言葉で、彼ら自身の目で、どのように自身のユニークな視点・観点を通してホテルでの、あるいはホテルが所在する都市での経験としてお客様にもたらすことができるのか、ということです。
ホテルが上質な絨毯や高価な食器、照明器具、最先端のテクノロジーを備えていることが重要なのではなく、ペニンシュラ・エクスペリエンスのよりソフトな部分はすべて「人」によって築かれているわけですから、「ペニンシュラ・パースペクティブ」広告キャンペーンがとても重要な理由は、従業員の視点を通して、ペニンシュラのラグジュアリーな要素、類まれなおもてなしを提供するペニンシュラブランドそのものを表現しようとしているからなのです。
そして、それは私たちの人材獲得プロセスにおいて、特別なおもてなしの気持ちと個性的でユニークなパーソナリティの持ち主を獲得しているという表れで、そこから卓越したカスタマーエクスペリエンスへとつながっているのです。
香港上海ホテルズ社 アジア地区 統括総支配人 ジョセフ・チョン
(Regional Vice President, Asia, The Peninsula Hongkong and Shanghai Hotels, Limited)
2000年、ザ・ペニンシュラ北京に入社。2007年にザ・ペニンシュラバンコクでレジデントマネージャー、2009年にザ・ペニンシュラ上海でホテルマネージャーとして開業を成功させる。2011年、同ホテルの総支配人に着任。その後、総支配人兼マネージングディレクターとして上海のホテルのみならず、同ホテルが運営するプロパティも統括する。上海への卓越した貢献が認められ、上海市政府が上海の経済建設、社会開発、国際交流に多大なる貢献をした外国人を表彰するため創設した「上海マグノリア記念賞」を授与。2017年、旗艦ホテルであるザ・ペニンシュラ香港のマネージングディレクターに着任。香港上海ホテルズ社アジア地区統括総支配人に就いた。2020年7月以降においても同職も継続している。