前回に引き続き新たに全データを更新して全国の主要都市を分析していくにあたって、今回も指標となる全国のデータを見ていきたい。今回は都市ポテンシャルを把握するのに必要な商業環境のデータ(年間販売額、売場面積、販売効率など)を中心に取り上げる。小売業や結婚式場業などの産業データについて、トレンドや都道府県のポジショニングなどのマクロ動向を整理する。
1.商業環境
まず、都市ポテンシャルの基本となる商業環境のマクロ動向を見ていきたい。経済産業省の「商業統計」、「経済構造実態調査」によれば、我が国の2020年の小売業年間販売額は 137兆6213億円 74百万円となっている。対前年 0.1%の増加で、ほぼ横ばいとなっていることがわかる。
年間販売額の長期トレンド(※ 1)を見ると、バブル期に販売額は急増していき、バブル崩壊後も1990年代は 140兆円レベルを維持していたが、1990年代後半から2000年代にかけては低価格志向が蔓延し、デフレが進展したこともあって、133兆円レベルまで減少していって
いる。(図表1)
2011年の東日本大震災の翌年の2012年の調査では114兆円となり、1988年レベルの販売額まで減少する状況となっている。このあたりをボトムに販売額は回復トレンドとなり、2016年には 140兆円台まで回復している。円安や査証要件の緩和、プロモーション強化などを背景にインバウンドが急増した時期であり、インバウンドの消費の急拡大も影響しているだろう。東京オリンピックの開催も控えてさらなる消費拡大が期待されていたが、新型コロナウイルスの感染が拡大した 2020年は緊急事態宣言による営業自粛や外出自粛、出入国規制によるインバウンドの消滅などによって厳しい状況となった。
同じく経済産業省の「商業統計」、「経済構造実態調査」によれば、我が国の2020年の小売業の売場面積は 13068万m2となっている。対前年比 0.8%の増加で、年間販売額と同様にほぼ横ばいとなっていることがわかる。(図表 2)
売場面積の長期トレンドを見ると、バブル期から2000年代にかけて増加の一途であり、2007年には 14966万m2と最も大きくなっていることがわかる。バブル期の経済成長に沿って各地で商業施設開発が活発化したが、バブル崩壊後も郊外エリアでの巨大モール SCなど大型商業施設の開発が進展し、売場面積は増加の一途となった。
しかし、郊外の大型商業開発は都市中心部の急速なスプロール化を招き、国もそれを問題視したため、1998年に郊外での大型商業開発を抑制するようまちづくり3法を改正、改正直前に駆け込み申請が多くあったため、しばらくは郊外エリアの開発は継続したものの、大型開発は徐々に減少していった。東日本大震災後の 2012年には 13292万m2と大幅に減少し、以降はほぼ横ばいとなっている。
近年は主力テナントであるアパレルなどのナショナルチェーンの床負担力が低下し、商業施設からの撤退が相次いでいた。コロナ禍がそれに追い打ちをかける状況となっており、空きテナントが後を絶たない。さらにオンラインショッピングが急成長して市場を吸収していることから、リアルの商業施設開発は岐路に立たされている。都市部でも郊外では高齢化の進展によって商業施設の新規開発が困難な地域も出てきており、都市開発におけるパラダイムシフトがおきている状況と言える。
2020年の販売効率(面積あたりの販売額)は 1.05百万円/m2となっている。バブル期だった 1991年は 1.29百万円/m2と最も高くなっていることがわかる。以降は減少トレンドとなっていたが 2012年をボトムに増加しており、2016年には1.07百万円/m2まで回復している。
人口当たりの販売効率を見るため、人口 1万人当たりの販売額を算出すると2020年は 137.6百万円/万人となっている。1990年代はほぼ 140百万円/万人を維持していたが、2000年代は130百万円/m2レベルに減少している。東日本大震災直後の 2012年、2014年は大幅の減少となったが、それ以降は回復トレンドになっている。(図表3)
都道府県の商業環境のポジショニングを見てみると、小売年間販売額は東京都が 19兆 7376億 21百万円と、他の道府県と比較して突出して高いことがわかる。全国の販売額の 14.3%のシェアを占めている。それに次いで大阪府の9兆 7367億 37百万円、神奈川県の9兆487億95百万円、愛知県の8兆3880億 80百万円となっている。増加率(2020年/ 2016年)を見ると、おおむねの都道府県で減少になっており、熊本県のみが増加となっている。人口規模の大きい首都圏では増加率はおおむね▲ 0.5%未満に抑えられているが、地方都市では様相は多様化している。▲10%を超える都市も見られ、格差が拡大していることがわかる。九州エリアは比較的下げ幅の小さい県が多い。(図表4、5)
売場面積と販売効率を見ると、東京都が売場面積 979万 6634m2で突出しており、販売効率も2.01百万円/m2と最も高くなっている。次いで愛知県が 757万 6088m2、1.11百万円/m2、大阪府が 711万1743m2、1.37百万円/m2、神奈川県が 678万 5018m2、1.33百万円/m2となっている。やはり大都市に高付加価値の商業機能が集積し、販売効率が高いことがわかる。(図表 6、7)
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2023年04月13日(木)