2泊 3日のプチバケーションを多様な趣味、ライフスタイルを持つ大人に提案する
前山 本件に対しては、最初に佐藤も私もロケーションの魅力を強く感じました。土肥からのトンネルが多い海岸線を車で走ってくると、いきなり景色が大きく開けてこの建物が見えてくるというのは、とても大きなインパクトをゲストに与えていると思います。
全客室が美しいオーシャンビューである点も素晴らしい魅力です。リゾートホテルにとって優れた眺望はお金では買えない大きな価値となります。
---イル・アズーリのコンセプトを教えてください。
前山 コンセプトとして「ライフスタイルを持つ大人のリゾート」を掲げています。多くの露天風呂付きのホテルや旅館は、カップル・お籠りステイを主な顧客ニーズとしていますが、イル・アズーリでは、「ライフスタイルを持つ大人」としてスポーツに限らずこだわりの趣味を持つ方を理解歓迎し、心地よく過ごせることを滞在価値としたいと思っています。
従来の旅館スタイルとはまったく違う滞在体験を提供することで、これまで地域に訪れていなかった客層を開拓できると考えています。
---連泊のお客さまが増えるといいですね。
前山 欧米のように 1週間以上のロングパケーションとはいかないまでも、2泊3日のプチバケーションのようなスタイルを提案したい。料理についても、豪華一辺倒ではなく周辺飲食店も含めた柔軟な対応を提案して行きます。
伊豆の自然を活かしたマリンアクティビティーやサイクリング、ドローン撮影なども積極的に紹介していきたいですし、施設としても新しいアクティビティーの開発に努めていくつもりです。
リゾートや温泉宿は長期的な視野に立ち年数をかけて熟成させていけるところが面白い
山下 伊豆のような土地でホテルを展開するのは、私にとってはじめての経験です。リニューアル前の運営ではゴールデンウィークも当日予約や前日予約、ウォークインが多いという傾向が見えました。皆さま天候と新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、直前に行動を決めているのだろうと思います。
前山 自家用車でいらっしゃる方が多いのですが、公共交通機関によるアクセスを充実していくことで客層をより広げていけると考えています。お金にゆとりはあるけれども、車を持っていない方々にどのようにアプローチしていくかは課題の 1つです。西伊豆エリアが抱える 2次交通の弱さを、これから克服していかなければなりません。
また、リゾート経営は季節的な繁閑対応に大きく影響を受けます。秋のマリンアクティビティーやロードバイクなど自治体も力を入れている滞在コンテンツ作りと歩調を合わせながら、ピークである夏場以外の季節の魅力作り、集客にも力を入れていきたいと思います。
---今後のビジョンを教えてください。
佐藤 自分自身の年齢を考えると、これからどんどん出店を拡大していこうという気持ちはありません。時代の情勢に合わせながら流れていくと言いますか、無理をしてでも儲けようという姿勢で取り組むつもりはないのです。
前山 リゾートや温泉宿は 1、2年で結果が出るものではなく、長期的な視野に立って何年もかけてだんだんと評価が得られるところが面白いと考えています。
今回のプロジェクトは情報取得から開業まで約 1年という短期間でしたが、さまざまな縁に恵まれたこと、コロナ禍であるにもかかわらず金融機関にも新規融資を決断していただけたことが大きな幸運でしたこうした。こうした絶好のタイミングを逃さずに意思決定していくことが、楽しく仕事を続けていくコツだと思っています。
山下 イル・アズーリのプロジェクトを進めるにあたって、パートナー企業も含めてこれまでの仕事を通じて私が大切にしてきた皆さまにチームに入っていただいていますので、生半可な形で終えるわけにはいきません。
自分自身も年齢を重ねてきて、体も思うようには動かなくなってくるでしょうから、後任をどのように育てていくかに重きを置きながら、懐の深いオーナーのもとでイル・アズーリの文化を築いていきたいと考えています。本当の意味でサステナブルな企業体を創っていきたいというのが私の大目標です。
株式会社三四郎
取締役副社長
前山 仁 氏
金融機関を経て産業再生機構、ゴールドマン・サックス、アビリタスホスピタリティなどで旅館、ホテルへの再生投資を多数主導。2014年より(株)三沢奥入瀬観光開発にて経営及びアセットマネジメントに関与する。