起死回生の鍵は“衛生の見える化”!
海外ホテル業界が重要視する、
観光復興の絶対条件とは!?
新型コロナウイルスにまつわる業界向けニュースを、
HOTERESスタッフが毎日解説する本コラム企画も20回目に突入。
今週末は、海外のトラベル&ホテル業界が、
ポストコロナ期における売上回復には、何が最重要課題と睨んでいるのかを、
本誌編集:加藤の視点で切り取ってみたい。
やはり茨の道なのか……
旅行業に回復の兆し!?
このコラムがアップされる翌週(5月25日以降)には、
東京や北海道の非常事態宣言も解除される見込みだ。
やっと経済活動再開となるわけだが、社会状況や市場ニーズは、
この2か月で大きく変わってしまった。日本も世界も……。
先日は、【タイ国際航空】(※注釈1)や、
アメリカの大手レンタカー企業【ハーツ】(※注釈2)が
経営破綻したという一報に驚かされた。
(※注釈1)タイ国際航空(THA/TG)は2020年5月19日、同社が申請した破産法に基づく会社更生手続きについて、タイ政府が承認したと発表した。事実上の経営破綻で、今後は中央破産裁判所の管理下で再建を進める。運航は通常通り継続する
(※注釈2)ハーツ・グローバル・ホールディングスは22日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を裁判所に申請、経営破綻した。近年、ウーバーやリフトといった配車サービスにシェアを奪われ、そこに加えて売上高の3分の2を占めるとされる空港からの利用客が、新型コロナウイルスの感染拡大で急減したことで、業績悪化に拍車が掛かった
やはり、収束まで耐えきれなかったかという残念な思い
(個人的にタイ航空のホスピタリティと食事は気に入っていた……)と、
ポストコロナでの旅行・観光業の回復は、
予想以上に険しいものかという重い気持ちが綯い交ぜとなった時、
HOTERES ONLINEサイト新連載【VOICES from the WORLD】の
アンドリュー・サッカーによる『中国では、復興へのおぼろげな光が見えている』
というレポートを読んだ。
早計か英断か?
先手を打った中国
詳しいレポート内容は当該ページにジャンプしていただくとして、
要はポストコロナ期に入った中国(と、先日の中国全人代にて李克強首相が演説)では、
すでに旅行消費が動き始めていると言うのだ。
外出禁止期間中のストレスをショッピングや旅行にぶつける、
『報復性消費(リベンジ消費)』
『報復性旅行(リベンジ旅行)』なる言葉まで出現し、
経済V字回復は目の前だという。
確かに、日本のゴールデンウィークに相当する労働節の大型連休時は、
中国の観光地には、国内旅行客が大挙して訪れ、
上海ディズニーランドも(全面開園ではないが)活況と聞く。
中国は、感染者が減ったことで収束が見えてきたと判断、
第二波到来も噂されるなかで、
よく踏み切れたものだと思ったが、
そこには感染防止への赤壁(※注釈3)ならぬ、
鉄壁の対策もあったのだ。
(※注釈3)三国志に登場する有名な古戦場。中国統一を目論む曹操が、劉備と孫権の連合軍と戦い敗北した場所。ウイルス発生時によく耳にした武漢市の近く
中国政府は、IT大手アリババ傘下の【アリペイ】が開発した
『健康コード(健康宝)』というシステムを人民に導入している。
これは個人情報とコロナウイルス感染リスク(感染度数の高さを緑黃赤の三段階表示)が
紐付けられ、スマホ等で確認できるもの。
上海ディズニーをはじめとした主要観光地は、
この健康コードとブースでの体温検査、
そしてマスク着用をクリアしなければ入園等ができないという。
つまりは、来園者だれもが“視認”できる安全対策をとり、
市場の信頼を得て経済復興に乗り出しているということだ。
『健康コード(健康宝)』
復活に動き出した
旅行大国・アメリカ
かたや、アメリカの旅行&ホテル業界も、ヒルトンやハイアット、
マリオットなどが所属する【AHLA(アメリカン・ホテル&ロッジング協会)】が
衛生安全基準となるガイドライン“SAFE STAY”を発表。
続いて【U.S.TRAVEL ASSOCIATION(全米旅行産業協会)】も、
同業界で働く従業員や顧客の安全を維持するための旅行業におけるガイダンス、
“TRAVEL IN THE NEW NORMAL”をリリースした。
【AHLA:“SAFE STAY”】
https://www.ahla.com/safestay
【U.S.TRAVEL ASSOCIATION:“TRAVEL IN THE NEW NORMAL”】
https://www.ustravel.org/sites/default/files/media_root/document/
HealthandSafetyGuidance.pdf?utm_source=MagnetMail&utm_medium=email&utm_
content=5%2E4%2E20%2DPress%2DProtocolsRelease&utm_campaign=pr
これらガイダンスは、従業員のマネジメントから消毒の方法、
衛生や食事提供の基準、キャッシュレス精算の奨励など、
その内容は多岐に及び詳細だ。
AHLAに至っては、ホテルがガイドラインに沿ってプロセスを遂行し、
終了後にはAHLAにアクセスすることで、
安全なホテルとしてAHLAサイトは名称公開をするようになっているので、
顧客はサイトに掲載されているホテルチェーンを“視認”して安心を得ることができる。
【マリオット・インターナショナル】は、もう一歩進んだ衛生アピールをしている。
それは約2分のオリジナル動画『Marriott Commitment To Clean』を制作し、
清掃スタッフはじめ、フロント、マネージャーなどが、
いかに清掃衛生に意識が高く、
細かい配慮で臨んでいるかを観て感じられるイメージムービーにして発信している。
ムービーの最後にはビル・マリオット会長が登場し、
“You've got my word on it.(お約束いたします)”と、
まさにコミットメントの一言で締めくくるものだ。
https://www.youtube.com/watch?v=ZFAhXffd_jU&feature=emb_logo
不可欠になった
“衛生の見える化”
この“衛生の見える化”は、訪れる顧客の安心を得る目的もあるが、
従事者への安全も確保し、優良人材流出への歯止め効果も期待されている。
この、視認&納得できる“衛生の見える化”=『見せる衛生プロモーション』は、
旅行&ホテル業界においての、
回復ロードマップに必要不可欠な要素であると断言したい。
エントランスに消毒液、スタッフのマスク着用は、
ポストコロナの世界において当然のアクションである。
回復の鍵は、その衛生アクションを、いかにわかりやすく、
いかにスマートに見せて、
市場の信頼を一日でも早く再獲得できるかにある。
『目は口ほどに物を言う』のだから。
(レポート:加藤 壮一)
海外情報から読み解くホテル業界のwithコロナ
2020年05月23日(土)